やっぱりと言うか散々渋られたが何とか聞き入れてもらえるようになった。もちろん条件付きであるが。

「ちゃんと降谷さんに報告しておけよ」
「……観覧車周辺を確認してから合流します」

勝手に電話を切って、これはダブル説教かなとぼんやり考えながらもう一度鳴らないようにスマホを仕舞い込んだ。どうやら観覧車に乗るのは風見さんと女の二人だけ。後は各セクションで待機と言うことなので私も乗り場に向かう必要はなくなった。
ならば見回りするに限る。非常口や物陰、様々な場所を入念に探りながらふと内部も見ておいた方が良いと思った。
スタッフに協力を申し出て観覧車内部に入れてもらう。ひとまず不審物、怪しい人がいないことを確認していたらカンカンと走っていく足音。
誰だろうと一応確認のために私も向かう。すると私がいることにも気付かれたのか、子どもの声に名前を呼ばれて振り返れば、なぜこんなところに、と聞きたげなコナンくんがいた。

「コナンくんもどうしてここに?」
「それより、すぐに確かめないと!」

走り出すコナンくんの後に続く。最中に話を聞けば、無数のコードが車軸に張り巡らされていると言う。
その先に仕掛けているものをすぐに確認しないならない。まさか、この観覧車で仕掛けてくると言うのか。一般人も乗っているこの状態で?
階段を駆け上がり、消火栓の中に入っている起爆装置を見つけたコナンくん。
コードの先についている塊は恐らく爆薬だと言う考えに同意を示す私は再び駆けだしたコナンくんを追うことしか出来なかった。彼の考えを聞いて、そっかと気付かされることばかり。
私は自分で考えることも行動に移すことも出来ないことを恥ずかしく思うのと同時に、この少年は一体何者なのだろうと考えていた。

「どうするつもり?」
「ここには赤井さんが……!」
「そう言えばさっき上へ向かって行ったような」
「うん!名前さんも早く、公安の人へ知らせて!」

こんな状態なのに戸惑ってしまう私は失格。知らせるべき人物、それは他の人だって良いはずなのに私の脳裏に浮かぶのはたった一人の上司。
散々止められたのに勝手な行動をしている。怒られることも呆れられることも覚悟の上だったのに。

「……黙って動いているから……」

判断の遅さが命取りになることは知っている。そして私一人じゃ何も出来ないことも。
何とかしようとして動いているコナンくんが大人に頼っているのも正しい。頼られるべき存在ではない私は一体、何をしているのだろう。
迷っている私へ痺れを切らせる様子のコナンくんを前にして、すごくいたたまれなかった。
そんなことをしていたら上から何かが落ちてくる音と、呻き声のようなものが響いた。二人分の男の声。まさか、と呟く前にコナンくんが行ってしまう。
私は自分の頬を叩いて正気を取り戻そうとする。多分上にはあの人もいる。もうあれこれ考えている暇はない。

「FBIとすぐに行く!」

嬉しそうなコナンくんの横顔が目に入る。頼れる協力者を見つけたときの安堵の笑みだった。
そうだよ、あんな風に安心してもらいたいのなら私自身が正さなくちゃいけない。
階段を下りてきた降谷さんと赤井さんは傷だらけだった。因縁の対決はどうやらお預けらしい。

「安室さん!」

駆け寄ってきた私の姿を見て一瞬ぎょっとしていたが、すぐに肩を落とした。

「やっぱり探っていたのか」

すみません、と安室さんへするべき態度ではないことは分かっていた。
反省も反論も後でにしますと強い意志で頷ければ彼もそれを許してくれた。

「……まあいい。説教は後だ」
「こんな時に喧嘩していた人に言われたくありません……いたいっ」
「それが上司に対する口の利き方か」

最後のは耳元で私に聞こえる声音で言われた。降谷さん相手には言い返せなくなるのを良いことにずるいと睨みつけていたら、至近距離にいた私達のことを振り向きざまに諭す赤井さん。

「いちゃつくのは後にしてもらおうか」
「な、やめてくださいよ赤井さん!」
「……は?」

照れ隠しだったのがそうすべきではなかったのかもしれない。
降谷さんの隣から赤井さんの傍へ移動した私は彼の全身を見遣りながら心配になった。重そうなライフルケースも汚れている。

「それより怪我は大丈夫ですか?」
「問題ない」

なかなか良いものを食らったがな。そんな風に零すのは降谷さんと私の仲を知っているからだろうか。それでもすみませんとして言いようがない。だって赤井さんは降谷さんの危機を救ってくれたのに。
過去に何があったのかは知らないが、こうしている時も後ろから感じる殺気が本当に申し訳ない。代わりに謝っている私への怒りとは知らず、赤井さんの隣を歩く私へ刺さる視線を無視し続けた。

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