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制服から着換えたとき、私の時間が始まるんだと実感できる。個性を主張する私服はいつだって勝負服になり得て、負けじと選ぶ瞬間が結構好きだったりする。 目敏くチェックされていた日々はもうずいぶん前のことで、それはあの人なりの距離の測り方だと分かった今でも私はその時一番だと思う服を着て、一見ではそれだと思われないライフルを背負う。このご時世スポーツバックやらギターケースやらお高い楽器やらで溢れているので隠すこと容易く、簡単に紛れ込める。
私の放課後は専ら彼らと過ごす時間と決まりつつある。これはバイトみたいなものだ。お金は出ないけど、スリルと非日常を快感に変えるにはぴったり。
お気に入りの音楽に身を任せて、気付いたら私は今日も足早にとある場所の一室へ向かっていた。その途中、バサバサと羽根を広げてお出迎えしてくれる存在にもすっかり慣れてしまった。

「オカエリ、オカエリ」
「ただいま、コトサカ」

しゃべるオウムの頭を撫でてあげようとしたらすんなりと躱され、またひらりと飛び立っていく。可愛いと思ったら可愛くない、という感想を抱くのも日常になりつつある。

「また来たのか」
「道反ちゃん、今日のお仕事は?」

もう終わった、と手持無沙汰であることを示され、同時にまたそろそろ、と諭される。こっちの世界に足を踏み入れている私を良しと思っていない道反ちゃん。その忍者みたいな格好の裏では私のことをどう思っているのだろう。心配してる?嘲笑ってる?

「何か面白いことないかしらねぇ」
「紫さん!」

ハァイ、と手を振ってくれる彼の元へ走る。時間が余っているのならぜひご教授頂きたい。まだまだ実戦では私は使ってもらえなくて、いつまでもお荷物じゃ嫌だった。
紫さんの美しい身の熟しは見ていてとても楽しい。嬉々として語る私の顔を笑いながら眺める紫さんはまた、妖艶な雰囲気を醸し出していた。いいわよ、と彼にも火がついたとき、ピリリと電流が走ったような気がした。私達を結びつける、絆。

「その前に、俺の話を聞いてください」

靴音がしたかと思えば、ずいぶん近くにいたから驚いた。簡単に背後を許す私をまだまだだと笑うが、全然嫌な気がしない。ちょうどいい緊張感に包まれ、流さんを囲うように私達は輪になる。
もう夜と呼べる時間、緑色の稲妻が空に広がる。さあ、秘密の話でもしてくださいな。



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