よく鈍いと言われるが(特に委員長に)まるで気付いてくれと言わんばかりに名前は分かりやすい反応をしてくれた。声を掛けても気付かぬふり、委員長と二人で話していても別の友達のところへ行ってしまう。
元々べったりな方ではなかったにしても、可笑しすぎる。それとなく委員長に伝えても笑ってる名前を見て彼女は不審がらない。俺から言わせれば委員長も相当鈍い部類に入ると思うよ。


「それじゃあ、山岳が何かしたんじゃないの?」

「うーん。まったく思い当たらないんだけど」


飲み物を許可なく飲んじゃったとか、約束しているサイクリングを寝坊ですっぽかしてしまったとか。
ああ宿題見せてって俺から言ったのにその日は結局休んじゃったんだっけ。他にも沢山、絞り出すと彼女の世話になりっぱなしだと気付く。


「……愛想尽かされたんじゃ」

「あはは」

「でも私は、山岳のこと見捨てたりしないから、」

「ん?」

「なっ、何でもないわよ!」


突然顔を赤くして動揺し始める委員長はやっぱりよく分からないなぁ。そんなことを思っていたら、少しだけ刺さる彼女の視線。すぐに逸らしていつものように取り繕う姿は、どうしても分からない。
嫌われたわけではないはずなのに、なぜ突然離れて行ってしまうのだろう。


「しょうがないわね。私が一肌脱いであげる!」


気合十分の委員長がいざ出陣。わーいと完全に他人事で、俺は様子を見て出て行こうと思っていた。
クラスメート数人と談笑している名前の元へまず向かい、彼女に話し掛ける委員長。あ、やっぱり笑ってる方が可愛いなぁ。最近目が合っても睨んでるみたいなんだよねぇ。
委員長が誤魔化すように慌てているのに比べて名前は動じていなかった。にこにこ、にこにこ。
いつの間にか委員長にも伝染して、取り込まれてしまっていた。


「……しょうがない」


助太刀しに行こうかと立ち上がる。輪の中へひょっこりと顔を覗かせれば、表情でごめんと謝ってくる委員長とまずアイコンタクト。その後、わざとらしく名前へ笑い掛ける。今までのことは何だったの、と言葉には出さずに。


「何話してるのー?」

「……あ」

「ねえ真波くん!この前走ってるの見たよー!」


打ち切られる感覚。はっきりと感じられた安堵を見せたまま逃げられてしまう。
他のクラスメートに話を振られ、それに答えている間に名前は輪の中から抜けてしまった。
俺を避けている様子を目の当たりにした委員長がようやく気のせいではないと分かったようだった。


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