疑問に思ったのは、便乗するように重なってくる声が聞こえないことに気付いたときだった。
いつものごとく自転車に夢中で遅刻ばかりする俺を怒る委員長。適当に流していたから反応が遅れてしまった。口ばかり動かしていた委員長の顔をじっと眺めていることに数秒。
すでに周りを見渡していた俺は、尋ねるしかなかった。


「あれ、今日名前は?サボり?」

「あんたと一緒にするんじゃないわよ。あれ、そう言えば居ないわね」


はてと二人で首を傾げる。委員長が俺に説教をするのと同じ頃、彼女と仲が良い名前が必ずと言っていいほど寄ってきていたのだ。誰の味方だか分からず、俺を庇うような発言をしようものならぷすぷす怒る委員長を笑っていたものだ。そんな名前の姿が見えない。
教室内にいないことを再度確認し、そちらに意識がいった委員長はその休み時間、俺の素行について注意することはなかった。


「教科書でも借りに行ってるんじゃない?確か次当たるみたいだし」

「へえ……あ、噂をすれば」


名前、とパタパタ駈け寄っていく委員長。心なしかぎこちない笑みを浮かべているように見えて、俺は身体を起こした。でもすぐに刻んだそれに見間違いかと腰を落とす。こういうことは委員長に任せておいた方だいいと判断し、欠伸をひとつ。ふと、こちらに映る視線。目に力が入っていた名前は何故か緊張しているようだ。
背の低い委員長の向こう側から交わる瞳。ひらりと手を振った俺と目が合いながらも、無視をされた。
あれ、と俺はもう一度首を傾げてしまう。だって昨日までは普通だったのに。


「ねえ名前、怒ってるの?」

「え?別にいつもと変わらないけど」


名前と話した委員長はけろりと返してくる。一面の曇りもない表情にこれ以上聞き出すことは不可能だと判断し、俺は窓際の席に座る彼女を見つめた。昨日までは、って繰り返す。
決してこちらを向こうとしない不機嫌な彼女を、不思議チャンと呼ばれる俺でも気になってしまう。


「俺、何かしたかなぁ」



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