空気が似ていると言われる私達は一部で噂だってある。友人として付き合っている以上話す機会がそれなりに多いのは認めるが、それを恋人同士だと判断されるのはちょっと待ってほしい。
私も彼も声を揃えて唱えるだろう。こんな奴タイプではない、と。


「ま、別に私は構わないんだけどね」

「俺の話を聞いてなかったのか?名前を選んだとなれば俺の人気はガタ落ちだ」


徹底している彼の言葉が本気だと言うことは熟知している。ファンの気持ちをよく理解しているから彼女なんて作らないし、作る暇がないというのもあるらしい。
私達の関係を睨んでいるのはよくいるゴシップ好きの人間達だけだ。あの子、あの子、あの子。口から出てくる名前は東堂ファンクラブの子から単に隣の席になった子まで節操がない。その一部である私は、東堂の傍に居心地の良さを感じているから一緒にいるだけである。


「それも楽しそうだなぁ。ねえ東堂、付き合ってよ」

「お断りだ」

「……フラれちゃった」

「ム!?そ、そんなにショックだったのか……?」

「ううん、大して」


伏せてから上目がちに開けば、私に易々と踊らされる東堂がいた。こいつは本当に優しくて良い奴だ。
私の反応にからかいの色が混じっていたことに気付き、俺の純情を弄ぶなと寒いことを言いながらデコピンしてきた。きゃーきゃー騒ぐ私達は多分、こういう関係がいけないのだろう。
じゃれ合う姿は嫉妬の対象だって、東堂の気持ちを知っていながら私も止めやしない。彼が他の女の子とこうやって冗談の触れ合いをしていたとしても、私には何の権利もないのだから。


「東堂でこっぱちくん」

「怒るぞ」

「……あの人から、また連絡が来なかったよ」


勇気を出した文面が綴ってあるメールを思い出すとどうしようもない気分になる。あんまり頻繁に送ったらしつこいだろうけど、たまに出した頑張りにも成果はない。
どうすればいいのかなぁと吐き出したところで東堂の表情が目に入る。東堂はいつも私が彼の話をしたとき口籠ってしまい、ワンテンポ置いてから話し始める。あっ、と私は明るい声で先に謝る。


「ごめん、何か言っておくとかいいからね」

「……ああ」

「それに他人から得た評価なんて信じなさそうだし」


自分の目で見たものがすべてと言い張りそうなタイプのあの人。ようやくゲットできたアドレスへ振る次の話題を考えていたら、携帯電話が着信を告げた。東堂に断りを入れながら取ると、今日の放課後カラオケに行かないかと言う誘いだった。どうしようかと返答を決めあぐねている私と、零れる電話先の男の声。そしてもう一つ、別の場所から押し付けるような澄んだ声。


「……そういうの、あいつは嫌うぞ」


東堂の有難い助言にも苛立ちを感じてしまってからの決断は、早かった。


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