好きって言われたら、好きで返したいじゃない。
そう答えた私に東堂は光のない目を大きく開いていた。それから溜め息と一緒に誠意がないと吐き捨てた。先程から着信を続ける携帯電話は無視をする。彼の物も絶えず誰かからの連絡を受けているようだが、私と違って意中の人の連絡だけは別のものに変えているらしい。マキちゃんマキちゃんといつも騒がしい東堂だけあって、名前だけは覚えてしまった。


「東堂も同じようなものでしょ」

「お前と一緒にするな。俺が特別を作ったらファンの子達が悲しむからな」

「私だって、その時はって思うのよ」

「……その台詞、一週間前にも聞いたな」


私達は話が合うのに、肝心なところでは噛み合っていない。恋愛に対して頑固で頭が重い東堂に対して、私はふわふわ軽くて一過性のものだと思っている。
こうしてよく愚痴を聞いてくれる東堂は私の性格も把握している。ピースをして見せ、もう別れたよと報告すれば、彼はバタンと乱雑にロッカーの戸を閉めた。


「この際だからはっきり言っておくがな、あまり男を舐めるなよ、名前」


やけに真剣な表情を向けてくるものだから茶化してはいけないと思いつつ、私だって黙って頷くわけにはいかなかった。ふむ、と反応を示しながら零し始める。


「こっちにだって言い分はあるんだけどなぁ。付き合った初日から連れ込まれそうになったから拒んだら話が違うって喚かれたから振ったの」

「……まあ、自業自得か」

「ひどいなぁ」


からからと笑う私を憐れむ瞳。これでも最初の頃は心配してくれた東堂だけど、私が何度も同じような事例を聞かせるものだからもう注意するだけ無駄だと思われている。
何もされてないよ、と彼には不要な言葉も受け止めてくれる。
古風な彼は永遠の一人と出会うために待ち続けているけど、それって気付かなかったらどうなるのかな。


「終わった?」

「ああ」


制服に着換え終えた東堂の後に続いて更衣室から出る。特別を持たない君が私とこんな場所で二人っきりってことへの危機感とか偏見への心配はないのだろうか。
似ていると言いながらも今一つ私には東堂のことが理解できない。
そしてそれは彼も同じに違いない。
並んで歩く私達は、所謂悪友と言うポジションがぴったりなのだ。


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