私の彼氏は甘えんぼである。以上。
ツイッターに呟きも残したし、背中から抱きしめた腕の筋を眺めるのにも飽きてしまった。
携帯電話を持ち出して今ハマっているゲームをし始めたら、くぐもった声がした。何だよぉと子どもみたいな言い方に吹き出したら、不機嫌に細められた瞳がこちらを捕らえていた。仕返しとばかりに抱える力が尋常じゃなかったので、バンバンと彼の腕を叩く。


「あ、らきた!死ぬ!死ぬ!」

「アァ?ンな簡単に折れるほど細くねーだろ」


少しだけ緩められた隙間からありったけの空気を吸い込む。大袈裟だと弄る荒北がピンピンしているのが納得いかない。一体誰のせいでこうなったと思っている。


「もう離れて」

「ぜってーやだ」


そしてまたぎゅうと力を込める。私の髪に鼻を寄せて煩わしい感想を乗せる彼はいつもこうだ。人前ではくっ付くなとかうぜぇとか言って私のことをないがしろにするくせに、影では誰だお前状態。
今日と言う今日ははっきり言ってやろう、と私は体勢を変えたいことを伝える。首筋辺りでクロスされている荒北の腕の中で回転し、向き合った私はちゃんと聞いてね、と気合いを入れる。あ、の文字で食べられてしまうことなど読めずに。


「あっ、あっ……!」

「名前チャン、こうして欲しかったんじゃナァイ?」


ぱくりと挟まれたキスはすぐに離れていってしまうのに、遊ぼうとする低音が耳障りに残る。
違う、とつい振り下ろした手を掴まれたとき、言い訳がましい考えがぐるぐる。ついでに目も回ってくる。


「へぇ、名前チャンは俺のこと殴ろうとするんだ」

「つ、つい……ね!」

「俺はこーんなに優しくやってるっつーのに」


乱暴しようとした爪を舐められて身動きが取れなくなる。堪えるように縮めた身体を追い掛けてくる荒北の牙のような歯が、見せ付ける。


「痛い方が好きならそう言えばァ?」


真正面から降ってきた唇は居場所を見つけたみたいに何度も何度も印をつけるのだった。



(おい名前!いちゃつくのもいい加減に……なぜ泣いている?)
(東堂、私はもう荒北には逆らわないよ)


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