モテていいよね、とか本音のように羨ましがられることはあるが、私はそれに対して首を傾げるしか出来なかった。
確かに友人には恵まれており、男友達も多い方だ。自覚はしているがそれらしい感情を向けられたことはない。
なかなか信じてもらえないが、告白だってされたことはないのだ。みんな友達だよと言うと嘘っぽく聞こえるらしいが、騒いだり恋愛相談をしたりする良き相手、それに尽きる。
好きな人がいる、そういった話をしたことはあるが、相手があの及川くんだとは言えなかった。
叶うはずもない恋、フラれたって報告をするのも嫌だった。当然だが、今の関係も勿論シークレットだ。


「名前、そろそろ教えてよ。好きな人とどうなったの?」

「だから何もないってば」

「俺達が助けてやるって。お前、結構奥手だからなー」


噂とは大違いと言って笑う友人達はいつだって私のことを心配してくれる。リサーチしてやるとか告白するときはついていってくれるとか。そういうお節介を表立って断ることが出来なくて誤魔化しているのもあるけれど、それでも憎めやしない。
自分で頑張って、玉砕する。いつか思い出として話せる日が来たら。それぐらいの気持ちだ。
最も、何年後かも連絡を取っているかは今の私では分かりはしない。


「つーかこの前遊びに行ったじゃん?ダブルデートとか言われたんだけど」

「ありえない」

「こっちだってお断りだよ」


仲の良い男女、どこからともなく流される噂。躍らせるほど弱い人間ではなかった私達は笑い飛ばして大はしゃぎ。今どき一緒にいるだけで付き合ってるとか意味が分からない。
そうしたらこの前二人で帰っていたあの子達は恋人同士か。いや、本当のところは知らないけど。


「学年一可愛い子に好かれてるって聞いたけど?」

「いや、ちょっとタイプじゃないんですよねー」

「俺だったらしょうがなく名前を選ぶわ」

「失礼な!」


渋々と言いながら肩を組んでくる奴の鳩尾を狙った。わりと本気で力を込めたらお返しをされて悲鳴を上げた。
きゃっきゃっと笑う目の前の二人は完全に傍観者で私と彼はお互いにただ文句を垂らしていた。
その時の私は視野が狭かった。目の前の相手のことしか考えられなくて、周りのことなんて見えやしない。鋭い眼光に気付きもせずじゃれ合う姿を見せ付ける、そんなつもりなんてなくても相手にそう見えてしまえば、はい、おしまい。


「お前は可愛くない」

「うるさい」

「仲良しだなぁ」


こういうやり取りを羨ましいと思う人もいれば、本気で疎ましがる人もいるだろう。
例えば今冗談で私の頭を撫でている彼を好きな子からしたら私は邪魔者で、逆の立場だったら嫌に決まっている。でもそんなこといちいち気にしてはいられない。一緒に居たいからいる、ただそれだけだ。
私が好きなのはあの人だけ。本人は信じてくれないだろうけど。



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