いつでも主導権を握られている気分だ。言葉一つで私は簡単に沈んでしまうし、ピンと張っている糸を切られる。
女の子は我儘な方が可愛いと以前及川くんは言っていたけど、果たしてそれは私にも当てはまるのだろうか。
ならば今すぐ伝えてしまいたい。女の子に囲まれる渦の中に身を投じて、彼だけを引き出したい。
私のものだよ、って主張は、二番目の私では成り立たない。


「名前ちゃん、さっきすごい顔してたね」

「どんな?」

「見るからに不機嫌そう。話に混ざればいいのに」


見ない振りをして通り抜けた次の休憩時間、何の用事もないのに同じように廊下に呼び出して立ち話をする。ああやってスルーする方が大人の対応かと思っていたが、割って入る積極的な子が及川くんの好みなのだろうか。
でも知らない女子を出し抜くような真似は出来ない。彼の一番なんて、私は知らないのだから。


「それとも、嫉妬した?」


あっさりとした言い方から急に熱を帯びる。難しい女子事情も理解した上での世間話に乗っていけない。ぴくりと動いた反応を苛立ちと見せて腕を組む。
目は見ない、取り込まれてしまう。


「節操なしだなぁと思って」


否定して、暗に含めてみる。私だったらそんなことしない。君だけを見てるのにって。
けれど作戦は失敗に終わる。一途アピールは全然届かなくて、本当に彼は私のことなんてこれっぽっちも考えていないんだって思い知らされる。


「それ名前ちゃんにも言えることだよ?」

「どういう意味かな」


つい反抗的ににっこりを添えてしまった。及川くんが笑みで応戦する。


「分かってるくせに」

「悪いけど全然だわ」


何が気に食わないのか分からない。彼だって、私が他の男の子と喋っていると目が合っても無視をして行ってしまう。話し掛けてきてくれたことなんてないし、こうして二人っきりで逢瀬を重ねても人前では恋人の色は感じられない。
及川くんの噂は積み重なって真実がねじ曲がってしまうことも多々ある。今のところ、私達が付き合っているという話は持ち上がらない。


「俺が見るとき、名前ちゃんはいつも男と一緒だよね」

「友達でしょ。それと、及川くんがしてるようなベタベタとか一切ないし」


関係ないと彼が言って、私もまたそう思う。
そうではなくて、その先のことが気になるのに、素直に聞けやしない。
大人しく受け入れること、そして一筋の可能性を見逃さないこと。私はそうやって彼の中に足を踏み込む計画を立てている。
嫉妬とか独占欲なんてあるに決まってるのに、どうしてこの男はそれを投げ返してくるのか!



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