世間話をするかのように告白してきた彼女は、俺のことを共犯者にするつもりだと思った。
男女問わず交友関係が広く、いつも囲まれている名前ちゃんはもちろん俺との距離も近かった。
中身のない会話、じゃれるように近付く人懐っこさ。明るい性格の彼女だから、話す機会も多かった。
その分、彼女の噂もよく耳に入った。隣のクラスの誰々君とか、後輩君とどこに居たとか、そういう下世話な話。もちろん交わすのも上手かったし、切り返しだってお手の物。それは同意出来る部分だった。


「今度は後輩?さすが名前ちゃん、モテるねー」

「人気者の及川くんに言われるとはね。それ、一人身には結構辛い話だよ?」

「分かる分かる。俺もよくモテまくっちゃってどつかれるけど、結局はフリーだし」

「あはは、じゃあ私が付き合ってあげるよ」

「本当?それいいかもー」


彼女とはそんな適当な会話もしたが、外部から入ってくるのは真実なんて分からない話ばかり。
それは向こうも同じだろう。廊下で話していれば今度は何組のあの子、とか俺もよく言われるから。
話してただけだっつーの。分かってくれる身内ならともかく、上辺しか見ていない所謂ファンと名乗る子達には見抜けないだろう。今は恋人のことなんて考えられなくて告白は有難いけど全部断っている。付き合ってもどうせ「やっぱり違う」とか言ってフラれるし。ふざけんな。
名前ちゃんから好きかもしれないと言われたとき、ああ駆け引きかと一人納得。友達が多いから男好きと噂される彼女もまた、誰とも付き合う気がないと言っていた。
そんな彼女がやけに改まって打ち明けてきて、もしかして疲れてるのかなと思った。本命にはもう少しでフラれそうとか、たまたま近くにいた俺に目を付けたとか。そういう軽いノリで言っているんだきっと。俺が乗らなければまた別の誰かを探すんだ。
そういえばこの前告白されてたとか騒がれてなかったっけ。あいつとはどうなった?
……考えるの、面倒臭くなってきた。
いつもの冗談を飛ばしても、彼女はそれでいいと言った。やっぱり遊びなんだ。お互い本気じゃないんなら、いいんじゃない?


「楽しくなりそうだね」


挑発してもただ頷いて笑って見せる名前ちゃんはきっと、俺のことも二番目に好きぐらいにしか思っていない。



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