暇そうにしているからと言う理由でまた買い出しを命じられた私は、端末であの夜の映像を眺めながら歩いていた。腕の中に抱えた布を抱え直し、こっそりと頼まれたお菓子を一足先に開封。自分の分にと買った飴を舐めながら、吟味。


「いっそのこと、名乗り上げてくれないかなぁ」


吠舞羅も夜刀神くんも探しているこの人が。
私だって聞きたいことはあるし、それが伊佐那くんじゃなければ疑いだって晴れるのに。
これからどうなるのか全然分からない。今私はどの場所に立っているのか。一体、どう在りたいのか。


「わっ」


重たい荷物と考え事をしていたからだろうか、ゆらゆらとしていた身体が後ろから走ってきた人とぶつかってしまった。その拍子にばら撒いてしまった荷物とお菓子。
運良く落とさなかった端末を制服のポケットに仕舞い、運が悪いなと思いながら膝をつく。


「大丈夫?」


転がしていた飴を思わず飲み込んでしまうほどの衝撃。おそらく私とぶつかってしまった人が、散らばる私の落し物を掻き集める。遊んでいそうだけど、格好良いお兄さんだった。
その傍にはサングラスをしてフードを被っている人や、帽子を被っている人。ガラは悪いけど、良い人そうだ。


「本当にごめんね」


摘み上げた飴を私の掌の上に戻し、にっこりと笑う。
そして声が出ない私を置いて、彼らは走っていなくなる。


「千歳、早くしろ」

「悪い悪い」


あんな人もいたんだ、と紛れていく背中を見ながら思う。素敵な人だと見惚れていたのも事実だけど、それ以前の問題もあった。ぶつかった衝撃で良く表に出て来なかったと褒めてやりたい。
流れ込んでくる熱が物語る。あの人達は、チーム吠舞羅だ。

さて、この後私はどういう行動に出たらいいのだろう。そう言えば彼らの拠点はこの近くだったか。
いやでもまだ行くのはちょっと、怖い。ならば敵を知ることから始めてみようか。


「覗き見するだけ」


見えない何かを辿るように、私は彼らが行った方向へ進む。

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