関わりを持ってしまったことに対して、それほど悪くないと思っている自分がいるのも事実。
蚊帳の外よりも当事者の方がストーリーの上では羨望の眼差し。
疑惑の目を向けながらも去っていく八田さん。背中を向けられた辺りで手を振る。
また会うことになりそうだと、街中で夜刀神くんと戦闘中の彼を横目に私は足早に学園に戻ることにした。



物語は時に迅速に、ドラマチックに。
ただこれが必要なものなのかどうか、私には判断しづらいところだ。葦中学園に戻ってきた私は変わらない日常を過ごすことになると思っていた。
いつも通り、クラスメートに囲まれてバカをやりながら学園祭の準備。そのはずだったのに、どうして彼がここにいるのだ。


「夜刀神くんと、菊理ちゃん……」


呟いた言葉と共に肩を落とす。聞こえてきたのは「良かったら、学生寮まで案内しようか?」と言う親切なそれ。あちゃあ、と古典的に頭を抱えた。明らかになりすぎている流れ、心の中で合掌。
伊佐那くん、学生寮に戻っていなければいいけど。


「ちょうどいい。貴様も来てもらうぞ」


下を向いたまま、見開いた目の先に映るのは。
いつの間にか私までターゲットにされていたようだ。夜刀神くんの後ろで笑う菊理ちゃんの無邪気さを今ばかりは恨む。


「あれ、名前ちゃんともお友達だったんだ?」

「そんな関係ではない」

「私は部外者だよー……」


美形に睨まれても怖くない、そう言ったのは誰だろう。いや、そんな誰かさんの持論は嘘っぱちかな。
有無を言わさぬそれに続く。菊理ちゃんと一歩後ろを歩く夜刀神くん、そんな彼の視線に見張られたまま私達は学生寮まで向かうことになった。





「おーい、シロくーん!」


おお、菊理ちゃんこんな大声出しても可愛いなんて罪だな。
聞えているであろうそれを耳にしながら祈る私。どうか、伊佐那くんがいませんように。出てきませんように。しかし、私の思いが届くことはなく。友達?と首を傾げながらベランダに出てきた伊佐那くん。
はい、運命の再会。はあ、と目に見える溜め息を吐き出す私と、果たせた喜びを表に出す夜刀神くん。


「案内、感謝する」


そうしてよく分からない技で移動。どうなっているんだろう、あれ。よく漫画である何とかの実でも食べたのかな。まるで瞬間移動したみたいにすばやくいなくなってしまった夜刀神くん。彼の存在ではなく忘れ物を気にする菊理ちゃんの優しさに若干引きながら、私は伊佐那くんの部屋に上がることを遠慮した。
今はきっと戦場だろうし、のこのことあの場に行くのもばかげていると思う。夜刀神くんは今は亡き無色の王の忠臣。あの映像を見て、自分の主の名を騙ったあの人のことが許せないのだろう。
仲間を殺したあの人のことを探している吠舞羅とは目的が異なる。あの現場に私がいたと知って、これ以上疑いが掛かるのは御免だ。


「じゃあ菊理ちゃん、私は先に戻っているね」

「うん。すぐ行くからー!」


ことこと煮詰めて、ぐるぐる掻き混ぜて、変色していく鍋の中身。途中まで上手くいっていてもどこかの過程で味が変わってしまった感じ。
悪いのは割り込んできた者か、はたまた最初の具材か。
終わりよければすべてよし。そうあってほしい料理の、まだ序盤に過ぎない。

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