私は本当にどうしようもない奴だな、ともやもやを抱えたまま朝になってしまった。
思い上がっていたのは事実だし、そんなに凹んでいるのもばからしく思う。それならもっと自分から輪の中へ飛び込めばよかったと、今さらながら後悔。帰れって言われてその通りにするなんて、諦めるの早すぎだよ。


「生徒会の人達、昨日学校に泊まって作業してたんだって!朝から参加してた友達が言ってた」

「は?朝から?」

「ああ。何でも、やっぱり心配だったからとか」


クラスメートのそんな会話が聞こえてきて、私はまた自己嫌悪。全貌を知らないらしい彼らは首を傾げる部分もあったが、見えてしまった私は机に突っ伏して唸り声をあげる。そうか、みんな積極的なんだね。
私が落ち込みすぎなだけなのかもしれないけど。


「名字、今日も生徒会の手伝い?」


普通に話を振ってきたクラスメートににへら、とおかしな笑みを浮かべる。どうやらクリスマスパーティーが楽しみらしく、どんな感じ?と進行状況を聞きたいようだった。
もう、いいや。面倒臭くなってきた。


「……払い終わったのですよ。勝手に決めたんだけど」


訳が分からないと言ったクラスメートの男子にはそれ以上何も語らず、「楽しみだね」と便乗しておいた。








クリスマスパーティーは全員参加で、私はぞろぞろ続く列の後をのんびりと歩いていた。
はあ、やっぱり私の気にしすぎだよね。と言うか自意識過剰で心配性?
生徒会の人達は別に私を邪魔者扱いしたわけじゃない。あのときにもっと意地を見せていれば、しょうがないなぁって笑ってくれたはずだ。生徒会の仕事、でも私だってちゃんと最後まで手伝いたかった。
その気持ちを、きちんと口に出していれば。

そんなことを考えながら歩いていたら、壁に校内新聞が貼ってあることに気付いた。
一面を飾るのは生徒会のメンバー。パーティーの準備中に撮られたものらしく、忙しくて大変だったはずなのに、みんなは楽しそうに笑っていた。とても、いい笑顔だった。

立ち止まってその写真を眺めてしまう。さっきの続きだ。口に出していれば、私もこの中に入れたのだろうか。
いや、何だかんだって「私は部外者だからいいよ!」とフレームに入るのを嫌がって、そんなことないと翼くんと月子ちゃんに引っ張られるのがオチだ。自分で考えて自嘲気味に笑う。それは真実。
自惚れとかじゃなくて、その場にいたらきっとそうするだろうという予想である。

自然にその中に入りたいというのは、もう手遅れのこと。成立した時から一致団結してきた生徒会メンバーの輪の中に溶け込みたい、そう考えるのはとても図々しい。


「……今さらだね」


どれだけ図太い神経なんだ、私は。話せる人が増えただけで貪欲になりすぎだ。
結局は人の顔色を窺って、誘われるのを待つばかりで。


「あ、名前ー!」


手をぶんぶん振ってこちらに走ってきてくれたのは翼くんで、その後ろには他の生徒会メンバーもいた。
彼らに会ったら、私は何を言おうと考えていたっけ。

先に帰ってごめんなさい?
楽しそうで羨ましいです?
私も残れば良かったです?


「早くしないと始まっちゃうぞ!」


笑い掛けてくれる生徒会の人達には、何も言わない方がいいのかもしれない。これは私の我儘で、今になって彼らにこうして欲しかったと勘付かれてしまうのも、ひどい話じゃない。


「ごめん、今行く」


だから私は笑みを浮かべて、彼らのいる方向とは逆に駆けていく。一緒に行ってくれるつもりだった?、と期待はしない。今の私が生徒会の人達と一緒に歩くのはなんだかおかしい気がして、それは別に隣に並べないという謙遜じゃなくて、単純に彼らが進行役で私が下で見ている役割だから。


「盛り上がるのを楽しみにしてます!」


振り向き様にそう手を振れば、力強い返事をしてくれる彼ら。
私は、走り続ける。

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