人間の慣れは恐ろしいものだと思う。
一年前の私は慣れない授業についていくのにひいひい言っていたし、友達も作らず卑屈に肩身が狭い思いで過ごしていた。なのに今は一人で堂々と歩けるし、(人はこれを開き直りと言う)食堂でランチだって食べられる。どうだ!と、威張れることではないのだが。

昨夜友人に話したら「あんたそれ楽しいの?せっかく逆ハーレムなのに」と言われた。いや、もうそんなことはどうでもいいんだよ。これ以上私を憂鬱にさせないで。



ぼんやりと考えていたらいつの間にか授業は終わっていた。先生が出て行くと同時に回ってきたプリントには明後日までの課題が載せられていた。よかった、私友達いないから誰かに聞くってことも出来ないんだよね。はは、別に寂しくはないよ。

プリントをしまって私はまたぼんやりし始めた。私以外全員男のクラスメートはみんな楽しそうだ。
頬杖をつきながら会話を盗み聞きしてみる。


「昨日のドラマ見たか?」

「夜に星見に行こうぜ!」

「やべー課題提出するの忘れてた……」

「おい、夜久が通るぞ!」


ぴくり、そこで私は顔を上げた。ゆっくりと、不自然じゃない動作で廊下に視線をたどる。
クラスメートの何人かが群がって廊下から身を乗りだしていた。「すげぇ可愛い……」と、どこからか本気めいた言葉が聞こえてくる。
それに比べて、と聞こえるはずもない声を恐れて私は顔を伏せた。まったく、いつまでこんなことを考えなきゃいけないんだろう。私なんか相手にされないのに。


友達がいない理由。分かり切ったこと、問題があるのは私自身だ。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -