「悪い!!待たせた!」
バシンッと跳ね返りそうな勢いで開け放った教室の扉に、修兵はゼェハァと息を切らせて凭れ掛かっていた。
どこから全力疾走して来たのか、額には薄らと汗まで浮かんでいる。
「遅ぇよ修兵、腹減った…」
だらりと机に突っ伏したままの一護が、恨めし気な視線を修兵へ寄越す。
「悪ぃな、ほら行こうぜ飯」
「そうだぞー、腹の空き過ぎでまたチビんなるからなぁ」
間延びした様な黒刀の声に、一護は橙頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜられながらひくりと青筋を立てた。
「なんねぇよ!!っつーかなんでお前も一緒になって待ってんだよ帰れ!」
「いいじゃねぇかたまには」
各々の部活休みも重なった土曜の午前授業。
ならば何処かへ昼でも食べに行こうかと誰からともなく連れ立とうとしていた矢先、廊下でばったり遭遇した音楽教師の松本乱菊が修兵だけを拉致する事数十分。
実に晴れやかな表情で戻って来た修兵を見て、教室で待たされていた一護、恋次、黒刀が一様にげんなりとした顔を見せた。
「…檜佐木さん、一応聞きますけど、今度は何やらされてたんスか」
「あ?あぁー…新しく納品があった楽器出して、古いの倉庫に仕舞って、廃棄の楽譜処分して…」
「「「で…?」」」
「ついでに音楽準備室の掃除と、あとコーヒー一杯貰って…」
「で、そのコーヒー淹れたの誰」
「俺」
それを聞いた三人から同時に盛大な溜息が漏れた。
「それ完っ全に小間使いじゃないっスか!」
「小間使いじゃねぇ、お手伝いだ!!」
「良く言うわ!!」
ぎゃいぎゃいと言い合いを始めた二人を、一護と黒刀はすっかり呆れた顔をしながら眺めている。
「何回目だこのやりとり…」
「仕方ねぇ、檜佐木は巨乳に弱ぇんだ」
「巨乳なぁ・・・」
それを聞いた修兵がぴくりと反応する。
「なんだよ嫌いなのか、美人に巨乳は男のロマンだろ」
「お前そんな乳乳言ってっと…」
ぐるり、修兵の背後へ回った黒刀が、
「!?」
「生えてくんじゃねえ?」
修兵の両胸を後ろからむんずと鷲掴んだ。
「うぎゃっ!!」
それを見た一護と恋次の視線が釘付けになる。
「ちょ、おい放せッ!あっ!!」
((あ、喘いだ…!!?))
「決まってんだろ!そんなもん、」
「痛ぇ!」
何とか黒刀の腕から抜け出して拳骨を見舞った修兵が、
「毎日揉む」
大真面目な顔で主張した。
「ブフォァッッ!!」
「うわ汚ぇな!!」
「恋次テメェ何想像しやがったァッ!!」
「なんだ…?お前らアホだな」
「「「アホはお前だ!!!」」」
終わる。
アホは私…。