「・・・!」

するり。
服の裾から侵入して来た掌は、滑らかな手触りを楽しむ様に這いながら、腰から伸びる曲線の辺りでぴたりとその動きを止めた。

「……」

素肌に直接感じる、拳西の無骨な手の感触と高い体温。

事の発端は何だったか、はっきりとは思い出せないにしろ、今やこれが拳西の掌の定位置の様なものになっている。
初めの方こそむず痒く身を硬くしてはいたものの、性的な意味合いを感じさせない自然な動作に、修兵も今ではすっかりしたい様にさせていた。

拳西に背後から抱き込められている時も、拳西に身を預けながら微睡んでいる時も。

二人で居る時には殆ど決まって拳西は修兵の腰の辺りの素肌に触れている。


(拳西さんに変な手癖が…)


もうこれから床に就こうとしている今もそうだ。
修兵にとっては未だ少し着慣れない、現世の"スウェット"と言うらしい部屋着の裾から差し入れられている掌が湯上がりの肌をさらさらと撫でている。
もう日常的になり過ぎてすっかり慣れてしまっているとは言えど、ほんの僅かでも意識してしまえば素肌に触れられているというのはどうにも気になってしまうもので。

「あの、拳西さん…くすぐったい」

「あ?あぁ、悪ぃ」

やはり殆ど無意識だったのだろう、修兵の言葉にぴたりと手を止める。
だけれどそのまま出て行く気配がない。
修兵はチラリと視線だけで服の裾から侵入しているそれを示した。

「拳西さん、最近いっつもこうですね…」

「あぁ、なんとなくな…嫌か?」

「嫌、とかじゃないですけど…」

「現世の服着てるお前見てたらつい、な、手ぇ入れたくなっちまった」

思った以上に心地良い感触と満たされる所有欲やら独占欲やらに、それからどうにも癖づいてしまったのだと言う。

「な…っ?」

自分から訊ねておきながら、返って来た直球な拳西の物言いに狼狽する。

「死覇装じゃ出来ねぇじゃねぇか」

確かに腰元を帯で締め付ける装いでは叶わない事なのだろうが、それにしても困った癖がついたものだと思う。

「これ…平子さん達の前ではしないで下さいね…」

「あ゙?別にいいじゃねぇか」

「良くないですよ!恥ずかしいじゃないですか!」

「…修兵お前、人の事言えねぇじゃねぇか」

「…何がですか?」

「気付いてねぇのか、お前、寝てる最中俺におんなじ事してんだぞ」

唇の端を上げて意地悪く笑みを浮かべる拳西に、修兵の顔がぼんっと染まる。

「え、な…っ、お、覚えてない!」

「だから言ってんじゃねぇか、人の事言えねぇって」

「寝てる時の事なんてそんな…っ」

もう十二分に良い大人だと言うのに、なんとも年甲斐の無さ過ぎる自分の行いを恥ずかしいと思う反面、覚えていない事に対する勿体無いと言う気持ちが相俟ってなんとも複雑な心境だ。

「………」

けれど、思えば思う程触れたくなってしまうのは人の性で。
ならば、ほんの少しだけ・・・、拳西の真似事をする様に手を差し伸ばす。
さらりと、掌に馴染む感触に、薄い皮膚から伝わる温かな体温。
無意識の内に拳西へ擦り寄りながら、ほぅっと小さな吐息を漏らす。
これは確かに、

(落ち着く…かも…)

「だろ?」

まるで心の内を見透かした様な拳西の一言に、修兵は耳まで真っ赤に染め上げた。





"惚れた証拠にゃお前の癖が
     いつか私の癖になる"



終。


兄鰤で修兵がパーカー着てるのを見てつい。
私も手ぇ入れt・・・!

都々逸五十五題(PC向)より

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