パラパラとページの捲れる紙擦れの音だけが響く静かな部屋で、さっきから修兵はそわそわと落ち着きを失っていた。
ソファーに身を預けながらコーヒー片手に雑誌を読み耽っている拳西を、床に座り込んでじっと見上げる。
(どうしよう…)
各々好きな事をしながらゆったりとした時間を過ごしていた筈なのだが、何故だか急激に人肌が恋しくなったのだ。
だけれど、何やら真剣に文字を追っている拳西の邪魔をしたくはないし、それに素直に伝えるにはどうにも恥ずかしさが圧倒的に勝るのだ。
(ちょっとだけなら…)
修兵は一つ息を吐いて立ち上がると、ソファーの真ん中へ座している拳西の左隣へそろりと腰を下ろした。
下ろした、はいいものの、
(ど、どうしよう…!)
途端カチンと固まった修兵に、拳西は気づいていながら敢えて傍観を決め込んだ。
(何か考えてやがんな…)
未だそわそわしている修兵に漏れそうになる笑いを喉の奥へ押し込めて、拳西は動かずに次の挙動をじっと待った。
「拳西さん…あの、拳西さんはそのままでいいですから…」
修兵はそう言って立ち上がると、雑誌とマグカップを手にしている拳西の両腕を器用に潜り抜けて、背を向けながら両足の間へぴったりと収まった。
そうしてほうっと安堵した様な溜息を吐いて、拳西の胸板へゆったりと背を預ける。
「何してんだお前」
「あの、拳西さんは雑誌読んでていいですから、そのまま…」
ふっと、小さく笑みを漏らした拳西の吐息が修兵の項にかかり、上から見下ろしたその耳がぼんと真っ赤に染まる。
(大胆なんだか控え目なんだか分かんねぇ奴だな)
拳西は手にしていたカップをローテーブルへ戻し、雑誌をぽいと投げ捨てた。
「いや、こんなもんよりイイもん見っけたわ」
そのままがばりと修兵を両腕で拘束しながら、耳同様赤く染まっていく項へ鼻先を埋める。
「え、や、ちょ…っ!」
「構って欲しかったんなら素直に言やぁいいのによ」
「なっ!は、反則…!」
「それはお前だろうが、もういいからちょっと黙れ」
「んっ!ま、待って、うわっ、あ…っ」
「嫌って言う程構ってやるよ」
「っ!!!」
終われ
バカッポー。