たかが7センチ。
されど埋まらぬ、
もどかしいばかりの7センチ。
「オイ!それヤメロっつってんだろバカ恋次!!」
放課後。
一護と修兵を呼びながら帰ろうと促す恋次が、なんの気もなしに一護の頭へのしりと手を乗せる。
「あぁつい、見下ろしてたらよ」
「てめぇ…バカにしやがって!」
後頭部を押すデカい手を振り払いながら一護は恋次を睨み上げた。
「おうおうチビっ子がガンくれても迫力ねぇぞ」
「チビじゃねぇ!お前がでけぇんだよ!!」
事実174ある一護は身長の低い方ではないのだが、いかんせん周囲に長身の者が多いせいでそう見られがちなのだ。
恋次に至っては当人と14センチもの差がある為か、時折こうしてからかいのネタに使ってくる。
一護はそれが非常に気に入らない。
「なんだよ、ちょうどいいじゃねぇか」
「ほら見ろ、恋次みてぇに脳味噌に栄養行ってねぇで無駄にデカイよりよっぽどマシなんだよ」
「言いやがったな…」
毎度のいがみ合いを続ける二人を気にとめず、修兵は背後から目線一つ分下にある一護のその肩へぽすんと顎を乗せてのし掛かった。
「な、しゅしゅ修兵…っ!?」
「んー?いやーちょうどいいなと思って」
「檜佐木さん!!何してんスか!!」
すぐ真横にある修兵の顔に、一護の耳がみるみる真っ赤に染まっていく。
日頃から修兵との7センチ差を気にしているのだが、これでは喜んでいいのか落ち込めばいいのか分からない。
ほぼ頬が触れ合ってしまいそうな距離に恋次が騒ぎ立てながらそれを引き剥がそうと手を出した瞬間、
ず っ し り
「ぐぇっ」
一護の頭上へ気配無く思い切りのし掛かった何かに、修兵は驚いてその身を跳び退けた。
「黒刀おまえいつからいた!?」
「あぁ?今」
重みに唸っている一護の頭の上で、190を越している黒刀は組んだ両腕へ顔を乗せながらその顎でぐりぐりとオレンジ頭のつむじを押している。
「まぁちったぁ成長したんじゃねぇの〜?」
「っのヤロ!!離れろ!!」
ケラケラと笑う黒刀にぶっつりと堪忍袋の緒が切れる音を立てながら、一護は思い切り反動をつけて頭を跳ね上げた。
渾身の頭突き、もといアッパーカット。
「!!!」
途端顎を押さえて無言でうずくまる黒刀に、一護はやり過ぎたかとその顔を覗き込んだ、
「あ、悪ぃ、大丈夫か…?」
瞬間、
「うぎゃっ」
「おうし捕まえた、よっしゃー帰んぞー」
「てめ黒刀!!汚ねぇぞ!!」
がっしりと一護を羽交い締めにしながら、黒刀は満足そうにずるずるとその体を引きずって教室を出て行った。
ぎゃーぎゃーと言い合う二人の声がフェードアウトしながら遠ざかっていく。
「お前ら、なんでそんなでけぇんだ!!!」
一護の切実な最後の叫びが廊下に轟いた。
「あいつら、仲良いよな」
「そうっスね…」
うっかり修兵と二人きりで帰れる事なった恋次はそれを幸運と思いながら、二人が嵐の様に去って行ったあとを呆気に取られながら眺めていた。
終わる
修兵と恋次の身長差が7センチ。
一護と修兵の身長差が7センチ。
萌える。
一護と黒刀の身長差にはより萌える。
そんな事考えてたらこんな事になりました。