「ぉお?」

余り近くで聞いていたいとは思えない甲高い黄色い声が、階段の数段上から届く。
半二階のカラオケの階段一本上るのに大騒ぎな、どこかの制服なのだろうか、チェックプリントのプリーツのミニスカートを揺らせながら可愛らしく戯れている。

「あーあ…」

「あ?なに見てんだ恋次」

唸る長身の後ろからぐいぐいとその身を割り込ませて、一護は恋次の視線の先を追った。
外階段のほんの数段上、キャーキャーと各々喚きつつマフラーやら鞄やらでしっかりガードをしながら、狭いそこを上って行く女子高生3人が目に入る。

「うわー…恋次ヤラシー」

それを目にした一護の、精一杯に軽蔑の念を込めた眼差しが恋次をじとりと睨み上げた。

「バカ、中坊かお前」

「うっせ。あーあってなんだよお前、オッサンか」

「オッサン言うな。別にー、見せたくなかったらそんな短けぇの履くなとか、隠すんだったらギャーギャー喚くなとか」

「あー…まぁな」

ただそれだけ。
そこが女の子の可愛い所、と言う人間と否と言う人間と。
特にどうでも良いと言えばそうなのだが…、なんとなく、だ。

「ふーん。可愛いじゃねぇか」

突如2人の背後からにょきりと顔を出した修兵が、押し退ける様にして段上の女子3人を見上げていた。

「え、何が、ミニスカートが?行動が?」

「どっちも」

「「ぇー…」」

「なんだよ、ミニスカートの絶対領域だぞ!?男として当然だろうがよ!」

「いやそうだけどさ…」

「え…まさかお前ら、ソッチ…?」

「「勘弁…!!」」

((アンタ限定でソッチとか言いてぇ!言えねぇ!))

「いやなんつーか、檜佐木さんも可愛いんじゃねぇ?ミニスカート、履けばい」


ガ ッ ツ ン !


ぼそりと呟いた恋次にジャスト顎めがけて渾身の頭突き一発。
存外石頭な修兵のつむじに跳ね上げられて、避け損ねてまともに食らった恋次が呻き声を上げる。

「殴んぞ!」

「……」

「舌…舌噛ん…っ!」

いかにもくだらないやりとりをしている最中に、先の女子高生達はいつの間にやら店内へ入って行ってしまったようで。
つまらなそうな顔をしながら二人を押し退ける様に階段を上ろうとした修兵の、右後方、腰の辺りに違和感。

頭突きから早々に復活した恋次が、あろうことか修兵の制服のスラックスへ指を引っ掛け腰元を引っ張っていた。

「ギャー!!なにすんだお前!」

「今日は檜佐木さん何履いてんのかなぁと思って」

「な…っ!!確かめんなばか!!」

本日の頭突き二発目。

「(惜しい!あと5センチ…!!)」



−終わる−



お粗末

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