オマケ。




「ねぇ、阿散井君、僕もうそろそろ帰りたいんだけど」

いかにも気怠げな声を出しながら、イヅルはちゃっかり自分の為だけに淹れた茶をずずっと啜っている。

「ちょ!もうちょっと付き合え!頼む!」

あれから泣きつく先をイヅルへと変更した恋次は、夜中に呼び出されて渋々顔を出した彼をそこへ引き止め続けていた。

「そもそも良い迷惑だよ、試験の結果が散々だったのも六車隊長にぶっ飛ばされたのも全部自分のせいじゃないか」

「いつもより冷てぇなお前…」

「本当の事じゃないか、そもそもこうして出向いてるんだからそんな事を君に言われる筋合いは無いよ」

「う・・・」

明らかに正論であるイヅルの言い分に、恋次はぐうの音も出ない。

「…なぁ吉良、後でちゃんと礼はするから先輩の荷物一緒に届けに」

「嫌だね」

恋次が言い終わるより先に、イヅルは表情一つ変えずピシャリと断りを入れる。

「デカいなりして何言ってんのさ、それに修羅場に巻き込まれるのはゴメンだよ、高嶺の花に手を出した事を呪って考えなしにすぐ行動に出る自分の短慮さをせいぜい反省したらいいよ」

「やっぱり冷てぇじゃねぇか…」

本体だけ連れ去られてこの場に丸ごと置き去りにされてしまった修兵の荷物を、恋次は思い切り肩を落としながらじっとりと眺めた。


(確実に俺、明日死ぬかも…)



−END−


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