「っ…!!!?」


ガバッと、凄い勢いで掛布を跳ね退けながら飛び起きた。
ぜぇはぁと断続的に吐き出される荒い呼吸が寝室に響いて、修兵はじっとりと寝汗をかいて湿り気を帯びるTシャツの胸元をぎゅっと握り込む。
なんだか物凄い夢を見ていた気がするが、夢と言うよりはいやに生々しくて記憶も鮮明だ。
ほんのついさっきまで己の身に起きていたような、覚えのある手触りや体温や鳴き声までもまだここに残っているようで薄らと汗の滲んでいる両掌へ視線を落としながら茫然と俯く。

「あ、あの二人は…!?」

ハッと勢いよく顔を上げて、ホワイトタイガーと黒豹に姿を変えていた拳西と阿近が気掛かりで息も整わない内に寝室を飛び出した。

(あれからどうなったんだっけ…!?二人とも戻ってなかったらどうしよう!!)






「拳西さん阿近さん!!!」

「「あ!?」」

バタバタと荒々しい足音を立てながらリビングへ雪崩れ込んで来た修兵を見て、優雅に朝のコーヒーを淹れて寛いでいた元の姿の二人が目を丸くする。
そんな二人を見てより一層目を真ん丸く見開いたのは修兵の方で、焦りを露わにした顔でずんずんと近付いて拳西と阿近の体をぺたぺたと触り始めた。

「なんだ?」

「朝から大胆だな」

何が始まったのかと、とりあえず修兵の好きにさせていれば、
”肉球と尻尾は!?”
”もふもふは!?”
だなどと言いながら服を捲り上げてきて二人の頭に盛大な疑問符が浮かぶ。

「何言ってんだお前」

「変な夢でも見たんじゃねぇの」

夢と、拳西にそう言われて、茫然としたままぱちくりと瞬きをした。

「あの…だって昨日起きたら拳西さんがホワイトタイガーで阿近さんが黒豹で…喋れるしお肉食べたりもふもふしたり…とんでもないことになったりして、」

未だ混乱しているのか、いまいち要領を得ないままぼそぼそと零していく修兵の話に、怪訝な顔をしていた拳西と阿近が同時に吹き出した。

「いやお前、夢に決まってんだろ」

「すげぇ寝惚け方してんな」

そう言って笑っているのはいつもとなんら変わりのない二人で、強張っていた修兵の両肩からふっと力が抜けていく。
つられるようにしてははっと弱々しく乾いた笑いを漏らしながら、くしゃりと後ろ髪を掻き乱して長い溜息を吐いた。

「夢、ですよね…、はあぁぁぁもう…びっくりしたー…」

―着替えて顔洗って目ぇ覚ましてきます。
そう言ってなんとなく地に足のつかない心地のままとぼとぼと部屋に戻る。
夢で良かったような、なんだか勿体ないような複雑な気分だ。
なんとなく現実味のない浮遊感を抱えたまま、とりあえず時刻を確認するべくタップしたスマートフォンのロック画面を見て、ピシリと固まる。

キー解除のための数字が並ぶその背景に、見慣れた自宅のリビングのど真ん中で腹を見せて昼寝をしているホワイトタイガーと黒豹がばっちりと写っていた。


「…うそだろ」



























「っていう夢を見たんですよ!凄いリアルな!」

「でも夢だろうが」

「良くそこまで覚えてんな」


「だから拳西さん阿近さん、も一回虎と豹になって欲しいです」


「「お前どんだけネコ科好きなんだよ!!!」」




― 終わる ―



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