※薄ら拳阿的描写アリ










ぼんやりと、修兵は夕食後の慣れた光景とまったりとした空気に身を任せて見るとも無しにテレビへ視線を向けていた。
大きな液晶画面に流れているのは、ここの所珍しく拳西がハマっているのだという刑事モノの海外ドラマだ。
登場人物もストーリーもなかなかに魅力的で修兵もそれなりに気にして見ているのだけれど、いかんせん前後に圧し掛かる重みのせいで集中出来ない上に、そろそろフローリングへ直に下ろしている尻が痛い。
最初こそソファへゆったりと身を預けていた筈なのだけれど、いつの間にか阿近に膝枕を強請られ、片付けを終えてそれを見つけた拳西が修兵の背とソファの間に割り込んで来た。
割り込んだ拳西が修兵を背後から抱え込んだせいでその膝に寝転んでいた阿近は当然前へ押し出され、ごろりと落下したかと思えば盛大に床へと頭をぶつけることになる。
修兵を挟んでなんだかんだと暫く言い合いをしていたものの、どちらからともなく疲れたのか諦めたのか、床と仲良くしている阿近に腕を引かれて修兵も引き摺り下ろされてしまった。

そうして、ソファを背凭れにして座る修兵の膝を阿近が変わらず独占して、唯一ソファに腰掛けている拳西が修兵の頭に顎を乗せて妙に落ち着いているという現状に至って暫し。

足も痺れて来たせいで集中力も切れてしまった。
とは言え、真剣な表情で画面に見入っている拳西の邪魔をするのは忍びないし、再び阿近の頭を放り出してはしっぺ返しが恐ろしい。
修兵は少し悩んだ挙句、二人の間から抜け出す事を諦めてなんともなしに手遊びをし始めた。

時折もぞりと身動ぎをしながらごろごろと修兵の膝を占拠している阿近の頭へそっと手を伸ばす。
見た目よりも柔らかく癖の無い黒髪の手触りは修兵のお気に入りだ。
阿近が膝枕を強請れば修兵がその頭を撫でるのは、今ではもう習慣づいてしまって条件反射の様になっている。
サラリと、額を隠す前髪を避けてアシンメトリーになっているサイドの髪を耳に掛けてやりながら、指に絡む髪にふと違和感を覚えた。
確か少し前までは耳に掛かる事も無かったし、こうして襟足を隠す程の長さも無かった様に思う。

「…阿近さん、結構髪伸びた?」

修兵は独り言の様に呟きながらくるくるとその髪を指先に巻き付けた。

「あぁー…そうかもな、」

気の抜けた声を上げながらごろりと仰向けになった阿近が、髪を弄る修兵の手ごと掴んで己の前髪の先を見上げる。
細い指先からはらりと目元に落ちた髪を鬱陶しそうにして首を振る仕草はまるで猫の様で、修兵は思わずわしゃわしゃとその頭を撫で回してしまった。

「おい!ヤメロ!」

「なんか、もっふもふ」

「だぁーっ鬱陶しい!切る!修兵!」

がばっと起き上がり乱された前髪をぐしゃりと掴んでくるりと修兵を振り返った。

「ん、了解」

他人に触らせるのは気が進まんと言う理由で、いつも面倒臭がって美容院なぞに足を向けない阿近の髪を切ってやるのは修兵の役割の一つだ。
ならば今までどうしていたのだと言う疑問はあるが、始めの方こそ緊張していたものの今では修兵にとってちょっとした楽しみでもある。
大人しく身を預けてくれている阿近にはなんとなく可愛げがあるのだ。

早速散髪の準備を整えようと拳西の下から抜け出そうとした修兵を、背後から首元に回った腕がぐっと阻止する。

「うぇ、拳西さん?」

「なぁ、それ俺にやらせろよ」

「・・・え、」

「・・・は?」

暫し眼下でじゃれついている二人のやり取りを面白そうに眺めていた拳西が不意にぼそりと呟いたそれへ、二人同時にぽかんと口を開いた。




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