その翌日の昼食時。

乱菊とイヅルが目にしたのは、見るからにスッキリと生気を取り戻して職務に勤しむ恋次の表情とは対照的に、ぐったりと突っ伏して潰れている不機嫌丸出しな修兵の顔だった。

「一カ月と三日」

「新記録ねぇ」

目に見えて明らかな"賭けになっていない賭け"の勝敗の行方を、二人揃ってわざとらしく本人の真横でネタにしている。
すぐ傍で交わされる無責任な会話を聞き流しながら、当の修兵は顔を埋める様に突っ伏したまま唸り声を上げていた。
ぶつぶつと呟かれている独り言ですら聞き取れないまでも、いかにも投げ遣りで最早世捨て人一歩手前だ。

「さーてと、決着も聞いちゃった事だしお暇するわよ」

修兵やイヅルよりも長い昼休みを取っている乱菊が、己を探しに来た上官の霊圧を敏感に察知してイヅルも共に席を立つよう促した。
どうせこの後言い訳のだしに使われて巻き込まれるのだろう予想はついているけれど、いつもの事なのでイヅルも諦めた様に渋々立ち上がる。
食堂を出る直前、くるりと踵を返した乱菊が修兵の突っ伏すテーブルの上に何かを置いて一言。

「そうそう、面白いもの見つけたからあげる!」

バチッと送られた可愛らしいウィンクと共にそう告げて、ぽかんとする修兵を置いてそそくさとその場を後にした。
一人取り残された食堂のテーブルに置かれた平たい紙袋をずるずると引き寄せる。
修兵はむくりと起き上り、手に取ったその中身をがさごそと取り出した。


『いぬのきもち 特集 "欲しがりストップ"』


「…………!!」


(ネタの提供元二人か…!)

楽しげな笑みを浮かべながら置いて行ったであろうあの金髪二人組の去った先を恨めし気に見遣る。
しかしなんだかんだで仲直りの切っ掛けになってしまった上、修兵が乱菊へ文句を言える筈もなく。
もしかしたら自分が一番のヘタレなのではないかと言う自覚を今更ながらに覚えて、修兵はう゛ぅっと唸りながら気怠さの残る体を再びぐったりと突っ伏した。























「乱菊さん…あんなもの良く持ってましたね…」

「あぁ、織姫とショッピングした時に面白そうだと思って!」

「そうですか…」

「早速役に立って良かったわぁ、またあの二人に奢ってもらわなくっちゃ」

「やっぱりそこですか…」











― END ―






元ネタ:07'某CP小話リメイク




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