木造二階建て築18年
8畳1K
トイレ風呂別
手狭なベランダ
駐輪場有り
ペット応相談
最寄駅より徒歩15分
コンビニ・スーパー・商店諸々
遠い所を除けば、なかなか好条件の



非常に静かで穏やかな立地。





ガキン・・・・・ガイン!!!




メリメリバッキン・・・・・・・




・・・ゴイン!!!!






「っだぁぁああうるっせぇぇええなコノヤロォォォオーッ!!!」



















「んあ"〜気持ち悪っ…」

だらしなく捲れ上がった裾から覗く腹を、ぼりぼりと掻きながら目が覚める。
二日酔いで凄まじい痛みを訴える頭をぐるりと回せば、万年床とは程遠い場所で丸一晩寝入っていたらしい。
(あぁ〜昨日マダオと呑んで…どうやって帰って来たんだっけ?…まいっか)
玄関で大の字になっていたため強かに固まった背中が頭同様悲鳴を上げている。
ごろりと腹這いになり、そのままずるずるとトイレの入り口まで詰め寄った。
扉を開けた瞬間込み上げてくるものを上から出しきって、よろついたまま冷蔵庫へ向かう。

「い、命の水…」

買い置きしている筈の紙パックの苺牛乳1.5リットルを目指し扉を開け放った。

「え…、…、ウソだろオイ…」

庫内を満たすピンク色の液体と横倒しになった紙パックを確認したのと同時、





ガキン・・・・・イン!!!



メリメリバッキン・・・・・・・


・・・ゴイーーーン!!!


  ゴ キン。




「っだぁぁああうるっせぇぇええなコノヤロォォォオーッ!!!」





そして冒頭に至る。







苺牛乳で満たされた冷蔵庫にとりあえず雑巾を突っ込み、ベランダからがばりと外を見下ろした。

「朝からなんだってんだよチクショー…」

銀時の部屋の丁度真下から大家のお登勢が煙草を咥えながら上へ下へと交互に見やり、誰がいるのか何のかんのと話をしながら溜め息を吐いている。

「おいババァ!朝っぱらからうるっせーんですけど!」

「あぁん!?誰がババァだって?とうにお陽様てっぺん登ってんだよこの無職!」

「無職じゃねぇし!っつうかなんなんだよさっきの轟音…て、え?ぇぇぇえ!?」

お登勢の視線の先を確認して愕然とする。

そこに存在するにしては有り得ない、隣室から落下したベランダの柵と、それに押し潰されてぺちゃんこにひしゃげているメタリックシルバーの自転車。

金属製の柵の角が見事に突き刺さり、ほぼ真っ二つだ。

「ちょ、おい!ソレ俺のチャリンコだよね?銀さんの愛車だよねぇ!?」

「いや固定してた金具が腐っちまってたみたいでねぇ、ちょっとした事でこの様さ。
 まぁ幸い怪我人も出なかったんだし、これぐらいすぐに修理すりゃ大丈夫さ、ねぇ?」

「おいおいこれがこれぐらいの事かゴラ!俺の愛車も弁償してくれんだろうなこのクソババァ!」

「何言ってんだいこんなおんぼろ自転車、大体駐輪場シカトこいて中途半端な所に停めとくのが悪いんじゃないか、ねぇ?」

「さっきからねぇねぇねぇねぇ誰と話してんだお隣さんかコノヤロー!まずこっちの話を聞、あん?・・・お隣さん?」

204号室、坂田銀時。
隣室の205号室は、確か先々週誰かが出たっきり今まで空き部屋だった事を思い出す。
日頃隣室に誰が住まおうが関心などは示していなかったが、空き部屋のままでこの騒ぎは有り得ない。

−ほら、あんまり身ぃ乗り出すんじゃないよ−

危ないからと煙草を持つ手で誰かに制しているお登勢にならってそろりと右隣を覗き込む。
柵が落下してこざっぱりとしてしまった無防備なベランダの、その縁ギリギリに両手両膝を付いてこちらを見上げて来る人間と目が合った。


「あ…、ご挨拶が遅れまして…、今日越して来た土方です」


騒がしくしてすみません、の声が届いたか否か、両手で掴んでいた柵から乗り込まんばかりの勢いで


「!!どうも隣の坂田ですってか良ければ俺が柵直しましょうか喜んで…!」


マダオよろしく捨て身のナンパを決行した。







* * * * * * * * * 







むさい男と安酒で二日酔い。

起き抜けにリバースした挙句冷蔵庫でイチゴ牛乳がリバース。

真っ二つにされた廃車確定自慢の愛車。

起き抜けに見たのが妖怪、いや沼に両足突っ込んでるババァの顔。



最悪な寝覚め全てを吹っ飛ばす、黒髪ツヤサラ色白超絶美人がお隣さんになりました。



そして坂田銀時25歳、どさくさに紛れ今この美人の部屋に上がり込んでいる。









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見切り発車で、始まります。

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