《AM 12:30》

昼食を終え、いつものようにパンタシアへとログインする。赤髪の魔女スカルラットが辺りを見回せば、いつもと何処か違う。仮装をした人々と、あちこちに飾られた南瓜。ピコンッ！と鳴り響いたメッセージ画面を開けば、運営からの通知。

「あぁそっか。もうハロウィンなんだね」

運営からのイベント告知を見て、納得する。それと同時に、一定の時刻になると仮装をしていないPLがゾンビ化すると言う文章を見て、思わずごくりと息を呑んでしまった。

「で、でも仮装すればいいんだよね？どうしようかな…」

考える。プレイヤーの都合でこの手のイベントには不慣れなのだ。しかし今はこのキャラクター…スカルラットの状態だ。今まで着たくても着れなかった衣装が、着れる。そこまで考えて、スカルラットは近くの服屋へと駆け込んだ。

----------

数分後、スカルラットは再び、始まりの都《アトランティス》を歩いていた。黒いドレスに角と羽根と尻尾の付いた、悪魔の仮装。その手にはいつもの杖とは違う三叉の槍と、先程菓子屋で購入したクッキーが入ったバスケット。中に入っている南瓜…もといジャック・ランタンの形をしたクッキーは、数枚ずつ袋に小分けされている。衣装代とお菓子代で所持金はだいぶ減ってしまったが、まぁ何とかなるだろう。

「へへっ、取り敢えずはこれで大丈夫かなー」

ニコニコと少し嬉しそうに笑いながら、スカルラットはアトランティスの街を歩いて行った。