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裏襲来 行動2

 
「ねっ、ボクとバトルしよ?」

その言葉と共に向けられた杖を見ながら、スカルラットは自分の持っている杖をギュッと握り締める。突然目の前に現れた、自分と同じ姿の彼女。今その彼女に、バトルを申し込まれている。ゴクリとスカルラットが生唾を飲み込んだのを見て、群青の髪を靡かせながらオルトレマーレが動いた。

「《五色:流水》」

オルトレマーレが静かに唱えると、その杖の先からゴボゴボと水が生まれ、スカルラットへと向けて放たれる。スカルラットは反射的に杖を構え、慌ただしく詠唱する。

「《召喚:サラマンダー》!!」

すかさずスカルラットの杖に炎が灯り、そこから勢いよくサラマンダーが飛び出す。その身体から煌めく糸を紡ぎ出し、オルトレマーレが放った水を防いだ。オルトレマーレはほう、と感心したようにひと息吐いてから、また楽しそうに笑う。

「へぇ…なかなかやるね」

「っ…」

やるしか、ない。サラマンダーが消えたのを確認し、スカルラットは杖を構え直す。杖に飾られた真っ赤なルビーのような宝石が、日の光を反射して鋭く光った。

「《五色:獄炎の…」

「《魔道:月魔法》」

スカルラットの杖が大きな炎を灯した途端、オルトレマーレが静かに唱える。次の瞬間、その杖の炎がその場で弾け飛んだ。

「っわぁ!!」

弾け飛んだ炎がスカルラットを直撃し、ダメージを与える。スカルラット自身は何が起こっているか解らない状態だった。対してオルトレマーレはその様子を見てクスクス笑い、楽しげに杖を振るう。

「じゃあ同じのを返してあげよっか。《魔道:月魔法》」

オルトレマーレの杖の青い宝石が淡く光り輝いたかと思えば、彼女がそれを振るうと同時に青白い炎がボウッ、とスカルラットの周りを焼き尽くしていく。どうやら彼女は、月魔法で魔力を満たしたり欠けさせたりできるようだ。スカルラットは瞬時にそう判断するも、炎がドンドン迫って来る。このままではバッドステータス《炎上》も受けてしまうだろう。スカルラットは杖を掲げた。

「《禁忌法:揺蕩えど沈まず(フルクトゥアト・ネク・メルギトゥル)》!!」

瞬間、スカルラットの足下に魔法陣が展開され、迫り来る炎とそれにより受けるであろうバッドステータスをオルトレマーレへと弾き返す。本来なら禁忌法はもっと後に残しておきたかったが、この状況では致し方ない。それを見たオルトレマーレの顔から、先程の楽し気な笑みが、消えた。

「《防御月魔法:金環日食》」

杖を炎に向ければ、そこから金色に輝くリングが出現する。金のリングに触れた炎は次第に小さくなっていき、最終的にオルトレマーレの受けたダメージは当初受けるはずだったそれより比較的最小限に留められた。スカルラットが次の攻撃を、と杖を振ろうとするのを見て、オルトレマーレは目を閉じる。

「なーんか飽きちゃった。思ったより早く禁忌法使っちゃうんだもん」

「あ、飽きたって…」

「…《超位魔法:魔眼》」

オルトレマーレが、静かに唱える。そしてゆっくりと目を開けると、先程までの群青の瞳はそこにはなく、スカルラットと同じ真っ赤な瞳が、そこにはあった。二つの赤の視線が、かち合う。

「っえ…!!?」

途端、スカルラットは意識が遠退くのを感じた。見れば、自分のHPが『0』を表示している。さっき禁忌法で回復したはずなのに。一撃必殺の魔法だったのだと理解した時には、バタリと地面に倒れていた。

「さようなら、緋色の魔女さん」

オルトレマーレのその言葉を最後に、スカルラットの意識は架空世界から弾き出された。

 



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