※If〜もし成り代わりヒロインが極度の人見知りだったら〜
周りが全く知らない人ばかり、と言うのは精神的に一番キツイと思う。
…が、やむを得ない場合、というか、うっかりそうなってしまうこともあるわけで。
「やあ、なまえ!元気そうだね。」
「チャオ。会えて嬉しいよなまえ!」
「こんにちは、レディ。相変わらず愛らしい方ですね。」
「…あ…はい、こんにちは…。」
金、茶、青。様々な色に囲まれてもう泣きそうだ。
人見知りが激しいわたしにとって、今のジャパンチームの皆と馴染むまで非常に時間が掛かったし難しいことだった。
そんなわたしがFFIで異文化の他国選手と話せるか…答えは否、だ。
そんなわけでFFIが終了するまでわたしはどのチームの人とも一言も…と言うのは言い過ぎにせよ、あまり話したことはなかった。
…なのに。
「本当に小さいな…よくこの手で俺やカズヤのシュートを止めきれたな。」
「ホントにねえ。可愛いなあ、なまえ。」
「ひ、ひう…!」
選手慰労パーティー的な意味で開かれたであろうパーティーで、遠慮無く手を握られたり頭を撫でられたり…果ては後ろから抱きつかれたりする始末。
…あ、やだホントに涙が出てきた。
別に彼らが悪い人じゃないってことは分かってる。
でも、やっぱり怖いものは怖い。遠慮をしてくれないスキンシップも、わたしより大きな体も、怖くて仕方ない。
…と、本気でじわじわ涙が溢れかけていたわたしの目に、見慣れた青が微かに横切った。
水分で潤んで見えにくい視界で必死にその色を追う、その先に心配そうな顔をした幼馴染みがいて。
…そこで、わたしの思考が色々ぶっ飛んだ。
「…一朗太ぁ〜!!」
「「あ、なまえ…!」」
「うおっ!?…大丈夫か、円堂…?」
自分でもこんな力どこから出したんだろうと疑問になるほどの力で周りにいた外国の選手達を振りほどいて一直線に一朗太に飛び付いた。少々よろめいたものの、わたしよりも逞しい体は難なくわたしを抱き留めてくれた。
「うう…ぐすっ…。」
そして一瞬後、涙腺崩壊。
ぼろぼろと止めどなく零れる涙を慣れた手つきで拭う様はやはり幼馴染みだな、と後々鬼道くんがこぼしていた。…のはまた別の話なのだが。
「…悪い、円堂は人見知りが激しくてな。少し席を外させてもらう。…行くぞ円堂。」
一朗太によって外に連れ出されたわたしは結局泣き疲れて眠ってしまい。その後どうなったかは定かではなかったものの、外国の選手達から謝罪の手紙が来て、少しだけ申し訳ない気持ちになってしまったのは、ここだけの話。
フリリク。ユツキ様に捧げます。
風丸