…面白くない。非常に面白くない。

「ねぇ、なまえ、僕と行こうよ。」
「え、えっと…、あの、照美くん、わたし…。」
「てめっ、勝手に決めてんじゃねーよ!!な、なまえ、俺と行こうぜ!!」
「や、だからね、南雲くん…。」

何が面白くないって、この状況が、だ。

さっきから私の妹であるなまえに亜風炉と南雲が絡んで事が気に入らないのだ。
何故こんな事になったのか…それは、なまえがうっかりスポーツドリンクの予備を切らしてしまったから買いに行きたいと申し出たことから始まった。

エイリア学園崩壊後、私と南雲は亜風炉にスカウトされて、韓国代表チームであるファイアドラゴンに入った。
勿論、私のなまえはマネージャーとしてこのチームに所属している。
…ここまでは良かった。ここまでは。

流石に韓国代表チームというだけはあって、周りは強い奴ばかりだし、キャプテンであるチェ・チャンスゥも中々のプレーヤーだ。
ただ…。

「その手を離したらどうだい?痛がってるだろう?」
「はっ、てめーこそその手を離したらどうだ?」

この2人の、このやり取りさえなければ、もっと良かった。
なまえは兄である私から見ても可愛い女の子だと思う。
思うけど、こうも目の前で兄である私を無視して彼女を取り合うと言うのはどういう了見なんだろうか。

南雲はエイリア学園にいたころからなまえによく絡んでいたから予想してはいたけれど、まさかここに亜風炉が加わるとは…。
まあなまえは可愛いから納得は…いや、出来ないな。
チェ・チャンスゥももうこの光景に慣れきってしまって、中断しようともしないし、チームのメンバーも右に同じ。
…なんか余計にイライラしてきた。

髪を撫で付ける手の速度が心なしか早くなってきている。相当のイライラしているようだ。
もはや完全においてけぼりの状態に拗ねてしまったのか、凉野が元々の無表情をさらに浮き彫りにし、むっつりと黙り込んだ、その時。

「…っ、わたしっ、兄さんと行きたいんですー!!」

左右から同じくらいの力加減で引っ張られていたなまえが思いっきり叫び、周りに沈黙が落ちた。
亜風炉も南雲もまさかここで叫ばれるとは思わなかったのだろう、2人も思わず手の力を緩める。

その隙に2人の間からするりと抜けたなまえは不機嫌そうに黙り込んでいた兄に抱きつく。

「「な…!」」
「…どうしたんだい、なまえ。」

突然の彼女の行動に2人は絶句し、逆に凉野の方は彼女から自分の方に来た事に満足しているのか、幾分か、いや大分柔らかい口調で彼女に話しかけた。
さりげなく抱きついてきた彼女を守るかのように抱き締めながら。

「兄さん、一緒に買い物に来てくれない?」

…結局、彼女の鶴の一声で凉野の機嫌はすっかりなおり、逆にフラれた2人はまたかとやさぐれてしまったとか。


(…貴女も大変ですね。)
(…何がですか?)
(なまえ、何をしている。行くぞ。)
(あ、はーい!)
(…ふむ、兄がシスコンなら妹はブラコンのようですね。あれはあれでバランスが良いのかもしれません…。)


フリリク。沙夜様に捧げます。
涼野

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