※Sun Like番外編

久しぶりに会った、幼馴染み2人の傍には1人の女の子がいた。
薄い茶色の髪にくるんとした髪と同系色の瞳を持つ、秋よりも少し小さな、華奢な女の子。

―それが、円堂なまえとの初めての出会いだった。

それから彼女らと一緒にプレーしたサッカーが忘れられなくて、一時雷門に留まって。それからの流れで一緒に宇宙人を倒して。
…それから、俺はアメリカに帰ることになった。

誰にも言わなかったはずなのに。そう―秋にさえ、言ってないはずなのに。

「…お別れ、なんだね、一之瀬くん。」

目の前には寂しそうに笑うなまえがいた。
どうして、何故。そういいかけて口を閉ざす。
彼女の前ではいつでも何となく軽口なんて叩けなかった。今も、そうだけど。

「はは…誰にも言ってないのに、良くわかったね。凄いな、相変わらず鋭いよねなまえは。」

なるべく明るいトーンで話をしようと気を付ける。寂しそうな彼女の顔を見たら、何故だか唐突に悲しい気持ちになってしまったから。
…でも、その努力も無駄になってしまった。なまえが、あまりにも優しい言葉を言うから。

「…わかるよ。だって一之瀬くんの事だもん。」
「…ッ!」

優しくて、けれどとても残酷な言葉。
端で聞いていれば、俺は彼女の‘特別’であるかのよう。…けれど実際は彼女の‘特別’なんて何処にもいないのだ。
―どれほど想っても届かない、いつまでも平行線を辿る。それも、俺の想いだけが。

「は…相変わらず、なまえは酷いよね。」
「え…?」

きょとん、と首を傾けて不思議そうな顔をするなまえを力一杯抱き締める。
びっくりしたのか、ばたばたと俺の腕から逃れようとする彼女を更にきつく拘束する。

やがて逃れられないと悟ったのか、抵抗をやめた彼女の柔らかな髪に鼻を埋めるようにして顔を寄せた。
優しい、安心するような香りにまたしても涙腺が緩みそうになる。

どうして、好きになってしまったのだろう。
どうして、こんなにも報われないんだろう。
秋の事も忘れられなければ、なまえの事も同じように想うからだろうか?

「わたし…一之瀬くんに酷いこと、した…?」

腕の中で小さく震える声に、思わず唇を噛む。…そんなこと言われたら、君のこと責められないじゃない。
…やっぱり、君はズルいよ。

「…ごめんね、なまえ。冗談だよ。」

僅かに腕の力を緩めて、片手を後頭部に、もう片方は背中に回す。
少し力が緩んだだけで安心したような吐息を漏らしたなまえに嬉しいような悲しいような、そんな心地に陥った。

…きっと、俺はアメリカに帰っても、この胸焼けするようなもどかしい感覚に捕らわれ続けるんだろう。

そしてその感覚を心地好いと感じる俺は、既に彼女に狂わせられているのかもしれない…なんてね。


32000のキリリク。アリア様に捧げます。
一之瀬

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