鬼道と話していると、佐久間がポッキーを持って現れた。佐久間そういうの好きそうだな。偏見だらけの感想を頭の隅に追いやって佐久間を見た。
「どうした」
「こいつに、」
「え、私か」
てっきり鬼道かと思っていたが違ったらしい。佐久間が私に用なんて珍しいなと思いつつ何、と訊ねるとポッキーの箱を差し出された。
「お前が買ってこいって言ったんだろ」
「あ、そうだ忘れるから頼んだんだ、ありがと」
差し出された箱を受け取ってにへっと笑う。買ってきてやったんだから1本寄越せと言う佐久間に笑って箱を開けた。鬼道は興味深そうに私を見た。
「何かあるのか?」
「バレンタイン的なやつ」
「そうか」
佐久間に1本おしつけるように渡して鬼道にも袋を差し出すと、鬼道はちょっとびっくりした顔をしてそれから笑って1本引き抜いた。佐久間は貰えて満足したのか、鬼道に挨拶して帰っていった。はむはむと頬張る鬼道は何だか珍しくて新鮮だ。私も同じように1本口にすると、箱の外側に付箋があるのに気付いた。ぺりっと剥がして見る。
「? どうした」
「何かついてた」
辺見の字だ。買ってきてやったんだから、ポッキーゲームしろ、と走り書きされている。おい佐久間、辺見に行かせてるのに1本貰ってったのか。まあ見てないだろう、と顔をあげると戸のところに辺見と佐久間が見えた。向こうには源田もいる。ええと、…マジ?
「鬼道、」
「何だ」
「ポッキーゲームって知ってる?」
知らなかったら、さすがに許してくれるだろう。そして坊っちゃんの鬼道は多分知らないだろう。恐らくきっと知らないだろう。頼むから知らないでいて。
「ああ」
「何で!」
うわあ、と項垂れた私の背中を鬼道は優しく撫でてくれた。ごめん鬼道、ありがとう。でもどうして知ってるんだ。些か残念な気分のままポッキーをまた1本引き出す。ちらりと鬼道を見ると、鬼道は首を傾げながら笑った。これはもう、腹をくくるしかないみたいだ。
「鬼道、」
「なあ、」
意を決した私のセリフに被って鬼道の声が凜と響いた。きょとんとした私の手からそれを丁寧に優しく抜き取り、ふっと企むように笑って私に向けた。
「ポッキーゲーム、しないか」
一瞬で耳まであっつくなった。
同じくoroのうーさんの所から掻っ攫ってきてしまいました。
…うん、文才あるって羨ましいです…。