はらはらと散りゆく花のように振り続ける雪を窓の中から眺めながらまだ湯気の立つココアを啜る。雪が降り始めたからか、あたり一面に無音の世界が広がっていくような気がした。暫くしんしんと降り続ける雪を眺めていたら唐突に背筋が冷えた様な感覚がして、慌てて手近にあったブランケットと、ついでに近くにあった毛がふかふかしているうさぎのぬいぐるみを傍らに引き寄せる。ブランケットで肩を覆って、ぬいぐるみを抱きしめたら、心なしか暖かくなった気がした。うん、なんだか、しあわせ。

「何してるんだ?」
「わあ!?」

ぬくぬくと1人、雪を見ながら幸せな気分に浸っていたら、後ろから聞きなれた低い声が聞こえてきて思わず奇声を発してしまった。恐る恐る、降り返れば何処となく悪戯が成功した子供のような顔で笑っている豪炎寺くんが立っている。…いつのまに。いや、それ以前に、どうやってここに。

「…な、何でここに…どうやって?」
「窓から入った。チャイム鳴らしても気付かなかったみたいだし」
「いやいや、電話とかメールとかしてよ、不法侵入だからね!」

未だにばくばく音を立てている様な気がする心臓を押さえつつ、立っている豪炎寺くんを見上げる。十中八九、ずっと外にいたんだろう。何だか寒そうだ、唇の色が紫になっているのがわかる。

「と、取りあえず座れば?何か飲むもの持ってくるから…」
「良い」
「良いって…寒そうだし」

一刀両断された私はどうしたものかと悩むばかり。そもそも、彼は何をしに来たんだろうか?無意識にぎゅっと両腕の中のぬいぐるみを強く抱きしめると、彼の眉が僅かに寄った、気がした。彼は無言で私の目の前に立ち、そしてあっという間に腕の中にあったぬいぐるみを奪い取る。そして、…放り投げた。ぬいぐるみは弧を描いてベッドのサイドテーブルに着地して、そのままこてりと倒れて動かなくなった(当たり前か)。

「え、ちょ、うさぎ!」
「こんなもの抱いていても暖かくはならないだろう」
「暖かいよ!もー、一気に寒く、な…」

豪炎寺くんに文句をぶつけつつ、ぬいぐるみの元へ行こうと足を一歩踏み出した、その瞬間。突然黒い影に前から覆いかぶさられた様な気がして、…気付いたら、私の体はごつごつした筋肉質な体に抱きこまれていた。

「…え?え!?」

1人でパニック状態に陥った私は何とか豪炎寺くんの腕から抜け出そうとして体を捩らせるものの、しっかり背中に巻きついた腕はそう易々と解けるものではなく、先に力尽きてしまったのは私の方だった。そのまま成すがままに彼の体温を享受する。…あったかい。

「…どうだ、うさぎよりも俺のが暖かいだろう?」
「…はいはい、そーですね。負けました」

したり顔、というかあの何時ものどや顔でそんな事を言い出す彼の言うことが、何だかちょっとだけ悔しかったから、右手で彼の頬っぺたをぺちり、と叩くと、私もそのまま大人しく彼に体を委ねた。冬の日に、一番欲しくなるのは人肌なのかもしれない、なんて考えながら。


分かち合う熱


陽依奈ちゃんへ捧げます!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -