大きな手はまるでお父さんのような包容力を持っていて、性格はとても穏和で世話好きな一面があって。考えれば考えるほど、彼は結婚相手としては最高の人だった。将来はきっといいお父さんになるんだろうなあ。
受験生用に、と出された小難しい数学の課題をこなしながらふとそんな考えを巡らせていると、こつん、と軽い衝撃が私の額に走る。

「こら、ボーッとするな。集中しろ、集中」

何事かと自分の思考の淵から戻ってきたら、呆れたような顔をした三国くんが私の方を見つめていた。…課題、もうほとんど終わってる、早いなあ…。

「お前、まだ半分しか終わってないじゃないか…」
「む…だってこう言うの見てると頭痛くなるんだもん」
「何をまた暢気な…もっと受験生らしくしたらどうだ?」
「…お母さんみたいだよ三国くん…」

話しているうちに更にやる気が下降していく私は顔が段々机に近付いて、そのまま頬っぺたと机の表面がこんにちはと挨拶していた。ひんやりとしていて、きもちいい。

「ね〜休憩しよ〜…」
「…仕方無いな…」

完全にだるーんとしてしまった私を見てこれ以上は勉強しないと悟ったのか、三国くんはため息をひとつ吐いて自らもシャーペンを手離した。

「ちょっとだけ、だからな?」
「ん、分かった」

苦笑する彼に対してそう答えると、大きな手が私の頭を撫でる。何だか、犬を撫でるようなその仕草が可愛い。

「…三国くんてさ、」
「ん?」
「良いお父さんになりそうだよね」
「…お父さん?」

思わず顔が緩むようなほのあたたかな雰囲気に流されるかのようにそう呟く。不思議そうな表情をして首を傾げている三国くんの手に自分の頬を押し当ててみる。私より体温が高い大きな手のひらは、少しだけカサカサしていた。

「そ、お父さん。…や、お母さんでもアリかも」
「お母さんはちょっと勘弁してほしいな…しかしまたなんでそう思ったんだ?」
「ん〜…何て言うの、包容力があるし、世話好きだし料理できるし、優しいし。…わあ完璧だ〜」

何故、と問われて彼の長所を色々と羅列していくと、もはや完璧に近いパラメーターが現れた。
…うーん、恐るべし、三国くん。

「そうか…?そうでもないと思うんだがな」
「おまけに謙虚か〜…良いなあ、三国くんみたいな人と将来結婚したい」
「…」

ずっと頬っぺたに当てている彼の温もりのせいなのか、段々と目蓋に重みがかかるのを感じつつもそう呟く。温もりがぴくり、と動いた気がした。
そのまま眠気に任せてくあ、と小さく欠伸をする。…と、その時に囁かれた言葉に、思わず眠気の全てを持っていかれてしまった。

「…なら、俺と結婚を前提に付き合ってみるか?」

…あれ、今のは幻聴、それとも現実?



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