ふわふわとシャボン玉のように浮いて弾けて。ゆったりと気持ち良く微睡んでいたら、突然それを邪魔するかのようにサッカーボールが飛んできた。サッカーボールは緩く弧を描いてわたしの頭にぶつかると、ころん、と転がってゆく。
じろり、とボールがやって来た方向を睨めば、間もなく仔犬のような顔をした持ち主が駆け足でやって来た。

「ごめん!!ボール蹴る方向間違えちゃった!!」
「…カノン、まさかとは思うけど…わざと?」

とても気持ちの良い時間を邪魔されて、若干不機嫌になりつつうろんげな目線をカノンに送れば、彼はぶんぶんと首を激しく横にふって、慌てたように否定した。

「違うよ!ホントにわざとじゃないよ!」
「…あ、そ」

ふわ、と欠伸をしつつそう返す。元々わざとでは無いことを分かっていながら聞いたので、そこまでオーバーリアクションしなくても良かったのだけれど。

「ねえ、眠いの?」
「ん〜…まあちょっとね…」

元気に尻尾をふる犬の如く目をキラキラと楽しそうに輝かせたまま、きょとんと首を傾げるカノンを横目にうーん、と伸びをする。
別に寝不足な訳でも何でもなく、ただただ単純にぽかぽかとした陽気の下にしたら眠たくなってしまった、それだけだ。

「寝ないの?」
「一回起きちゃったら中々寝つけないから、もういいよ。…ところで、また昔風のサッカー?」
「うん!さっきまでさ、バダップ達と試合してたんだ!」
「ふうん…」

いつだったか、王牙学園が発動した過去改竄の作戦が失敗してから、あの王牙の石頭達も本当に正すべきものは何なのか気付いたらしい。最近ではバダップ達も混じってカノンとサッカーをしているのだと噂を聞いた。

「やっぱりバダップ凄いんだよ。ますます必殺技に磨きがかかってきてるんだ!」
「へえ…」

キラキラとした目で楽しげにサッカーを語るカノンに相づちを打つ。何と言うか、彼と話していると和むのだ。
わたしはサッカーはやらないけれど、カノンの話を聞くのは楽しいし、悪くなかった。…自分もやってみたくなるほどに、サッカーに対する興味が高まっていくのも、やはりカノンの影響を強く受けているからなのだろう。

「…わたしもやってみたいなあ」

思わず漏れた呟き。ハッとした時にはもうすでに遅かった。いつもよりも輝いた目をしたカノンに腕をギュッと掴まれる。…あ、墓穴掘ったかも、わたし。

「やろうよ、サッカー!」
「え、や、今のは言葉の綾って言うか、ね?」
「よし、じゃあ早速俺のチームメイトに紹介しに行こうか!」
「や、だからカノン、まっ…!」

ぐいぐいと手加減無しで引っ張られる腕の痛みを感じながら何とかカノンを説得しようと足を踏ん張る。今さらサッカーを初めても、彼らとプレーするまで何年かかるかわからない。

「…やらないの?サッカー…」

すると、前を歩いていたカノンが突然振り替えってうるうると目を潤ませてきて、思わず詰まる。…何だか、悪いことをしてしまった気分になってしまった。…いやまあ、わたしが悪いんだけど。

「いや…あのねカノン…」
「やらないの…?」
「あ、いや…やります…」

負けた、あの捨てられた仔犬の様な目に負けた…!!思わず項垂れながらそう肯定すれば。先程の表情が嘘だったかのようにじゃあ行こう!なんて元気良く歩き始めるカノンに少しだけ悔しさを感じる。…やられた。あれは演技だったのか…。

…それでも結局、断らずに素直に従う自分も大概だと、密かに思いながら前を歩く彼の背中を眺めた。
…まあ、彼と一緒ならば悪くもない、のかもしれない


光年さまに提出。
非常に遅くなってしまってごめんなさい…



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