じっと、ずっと俯いて背中を丸める。傍らから見ればきっと、みっともない駄々っ子みたいに見えるんだろうな、なんてぼんやり考えながら頭から毛布を被った。窓の外は晴天、この上の無いサッカー日和。きっと円堂君はこの寒空の下、元気にボールを追いかけてるんだろうなあ、なんて、容易に想像できて思わず笑ってしまう。
それと同時に、喉へと込み上げる咳。…どうもこの季節は体調を崩しやすいようだ。自覚すると同時に上昇する体温と頭の痛み。完全に風邪の兆候だ。

体は熱を持っているのに、対して寒気の走る背筋に震えて、ぎゅっと体に巻き付けた毛布を強く握り締めた。この熱を何処へも逃がさないように。

不意に込み上げてくる、どうしようもない不安な気持ちと孤独感。…あれか、風邪の時ほど人肌が恋しくなるというやつか。しかし生憎と両親共に働きに出ていて不在、この家には私しかいないのだ。…まあ、仮に両親がいたとしてこの年頃、何の足しにもならないだろうけれど。

物足りない気持ちを紛らわそうと傍らにあったオレンジ色のクマを抱き寄せる。もふもふとした柔らかく心地好いクマの感触に思わず息を吐くと、後ろから聞き慣れた低い笑い声が聞こえてきた。…あれ?

慌てて後ろを振り返れば楽しげに口許を押さえて笑う、見慣れた彼の姿が見えた。

「え…ちょっと、何でここに?」
「玄関からだ。不用心にも鍵が空いていたぞ。」
「嘘!?」
「嘘じゃない。」

くつくつと低く笑いながらゆっくりとわたしが座り込んでいる隣に屈むと冷たい手でわたしの頬を撫でる。あついな、と慈しむように優しく囁くような声が耳を擽る。思わず縮めた首、更に熱が上がった気もする。

「横にならないのか?そっちのが楽だぞ。」
「良いの、このままで。」
「…夕香みたいだな、そうしていると。」

何だか横になるのも憚られる気がして、笑む豪炎寺を見ないようにと抱き締めていたクマに顔を埋める。そうしたら、また低い声でくつくつと笑いだした。
その言葉に、わたしは軽く頬を膨らませる。―また、子供扱いして。

「…子供じゃないよ。」
「そうだな、お前は子供じゃあない。」

尚も笑う豪炎寺はそっとわたしの体を毛布ごと抱き締める。目の前には鍛えぬかれた逞しい胸板が見えて、また体温が上昇する。心無しか頭がクラクラしてきた。

「ちょっと…風邪、うつるよ…。」
「うつせば楽になるだろう?」

何とか引き離そうと力の入りにくい腕で胸板を押してみても効果は無し。逆にじわじわと抱き締める力を強められた。じんわりと頬から熱が伝わってきて、とても心地が良い。規則正しく動く心音が、眠気を誘う。
くあ、と欠伸が自然と漏れると、豪炎寺の手のひらが優しく頭を撫で始めた。

「起きるまでちゃんとここに居るから…早く寝て、良くなれよ。」

―あ、もうダメかも、意識的に。
そう思いながらゆっくりと瞼を下げて。
柔らかく額に触れた温もりの感触を最後に、わたしの意識は温かな闇の中に沈んだ。




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