さらり、と長く伸びた綺麗な銀の髪と首の間にそうっとタオルを通す。タオルの生地が項に触れてこそばゆかったのか、佐久間はぴくり、と身じろぎした。起きたのかと思って恐る恐る顔を覗きこむけれど、そこには気持ちよさそうに眠っている顔があった。…どうやら相当に疲れているらしい。

「…帰ってお風呂入るまではいいけど…髪の毛くらいは乾かしなよ…」

きゅ、きゅ、と微かな音をたてながら丁寧に傷みの無い毛先から水分を拭き取る。昔からそうだけど、女の私も思わず嫉妬してしまいそうな程の綺麗な髪だ。髪の毛を拭ってあげつつも少しだけ悔しくなってしまって、くん、と軽く一房をひっぱる。…と、小さくうめき声をたてながら佐久間が目を覚ましてしまった。…ぐっすり寝てたのに、ちょっと悪い事しちゃったかな。

「おはよ、佐久間。よく寝てたね」
「…ああ、お前か…」

ふあ、と見た目の繊細さとは裏腹に大口を開いて欠伸をした彼は、後ろに回っている私に少しだけ遠慮しつつ伸びをした。なにやら腰の辺りや首の辺りからバキバキという音が聞こえたのを聞きとがめて思わず顔を顰めてしまった。…これは相当こってるな。

「…やっぱり大変なの?鬼道くんがいない帝国って」
「う、ん…まあな…やっぱあいつは凄いと思わされる」
「まああの人はね〜…ほら、ちょっと横になってみ」
「は?…何でだよ」

怪訝な顔をした佐久間に構わずソファーに倒して背中に乗っかる。慌てたような佐久間の声を無視して肩や腰の辺りの筋をぐっと押さえる。…うん、すごい凝ってる、お爺ちゃん並かもね。

「ちょ、おまっ…!」
「はいはーい、ちょっと大人しくしてね。マッサージしたげるから」
「…ああ、そういう事ね…」

ちょっとだけ残念そうな彼の声を無視して筋をほぐすように力を込めて押してやる。固い、とにかく固い。

「かた…ホント凝ってるねえ」
「あ〜…データ処理してるとパソコンを使う事が多くてさ」
「なる。…サロンパスでも貼る?」
「…頼むわ」

つん、とした刺激臭が鼻につくサロンパスをペタペタと褐色の肌に貼り付ける。…よし、こんなもんかな。

「…何か、夫婦みたいだよなあ、俺たち」

不意に佐久間が漏らした言葉に思わず動きを止める。鬼道くんが大好きでペンギンが大好きで、それにしか興味が無いものだと思っていた彼が、こんな事を言うなんて…と、少し感激ににた感じを受けてしまう。それが伝わってしまったのか、少しむっとした佐久間が唇を軽く尖らせて見せた。

「…何だよ、悪いかよ」
「べっつに。…夫婦か〜…」

悪くないかもねえ。と何処と無く呟くと、途端にパアッと明るくなる彼の顔。…何だか、ちょっと可愛いかもしれない。

「…でも、それは佐久間が鬼道くん大好きから卒業して大人になってから、だね」
「…何だよそれ…」
「頑張れって事だよ。…応援してあげるからさ、ほら、頑張れ〜」

最後に首筋の辺りにぱん、と強くサロンパスを貼り付けるといてっという声が聞こえたのを合図に佐久間からそっと離れる。そしていつの間にか床に落ちていた少し湿ってしまったタオルを拾い上げていたら。

「…俺、本気だからな…!」

覚悟しとけ!といいつつニッと少年のように笑って見せた佐久間の笑顔に、少しだけ大人の影を見つけながら。少しだけドキッとしたのは、胸の内に秘めて、私も佐久間に向かって笑い返した。


11.11.16、という事でハッピー佐久間デー!…みたいな?(^^;




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