タイプ別、分類表

※秋ちゃん視点

思わぬ事態にあったけれど、それでもリカちゃんっていう一之瀬くん大好きな女の子が仲間になった。何時もよりも紗玖夜ちゃんが嬉しそうなのも、多分気のせいじゃない。彼女は女の子の選手が増える事を誰よりもきっと喜んでいるに違いない。
雷門中の中にいた頃はずっと一緒に居たはずの風丸くんや鬼道くん達と少しだけ距離を置いて、塔子ちゃんやリカちゃんと一緒に楽しそうに何かしらをずっと喋っていた。宇宙人との戦いの中で常に気持ちを張り詰めているように見えた彼女が安らいでいるように見えて、その光景を見るのは私も好きだった。

「そういや、紗玖夜は雷門のメンバーの中でのタイプって誰やの?」
「…ほへ?」

…でも、ちょっとだけ。ちょっとだけ紗玖夜ちゃんとリカちゃんの価値観、みたいなものがちょっとだけ違っていて。違っているから、妙に会話が噛み合わない事がたくさんあった。現に、今も。

「やから、うちらのキャラバンにも男がぎょうさんおるやろ?」
「うん、まあ…」
「サッカー部が主体だしな」

私や音無さんや夏未さんはそこまで聞けばリカちゃんが紗玖夜ちゃんに何を聞きたいかって言うのがある程度分かったけれど、そういうのに鈍い(或いは興味が無い)紗玖夜ちゃんや塔子ちゃんには最早意味が通じていない。2人ともが顔を見合わせて首を傾げていた。

「ほんで?誰やの?あ、ダーリンは譲らへんで」
「…?うん…?」

よく意味を理解できてないまま押しの強いリカちゃんにマシンガントークで押され、取り敢えず頷く紗玖夜ちゃん。本気で困り顔だ。普段男の子を困らせている彼女だけれど、だからこそこう言うのに慣れてないんだろうなあ。

「…うーん…よくわかんない…」
「はあ?何で分からんのや、それがウチには理解できんわ…ほんなら、風丸と鬼道と吹雪の3人に絞るわ。これならわかるやろ!」

今度は紗玖夜ちゃんが比較的よく一緒にいるサッカー部の男の子達に対象を絞る。確かにこれでわりと答えやすくなった…と思っていたら。やはり言葉の意味を正しく理解できなかった紗玖夜ちゃんから、ちょっとトンチンカンな答えが出てくる。

「えっと…一郎太がMFとDFが出来て、鬼道くんはMFで…吹雪くんもDFだから…」
「でもそれじゃ分類できなくないか?風丸だけだよ、2つに応変できるの」
「あ…それに吹雪くんFWにもなれるんだ…うーん…どう分類するの…?」
「性格じゃないか?ほら、風丸と鬼道だったら2人とも生真面目で神経質だぞ」
「あ、そだね!…ん?でも吹雪くんは神経質はあるけど生真面目って言うより優しいって言った方が合ってない?」
「ああ…それにあいつ、何処と無く頼り無いよな。背中は任せられないし」
「何かたまにかわいいよね!ぎゅってしてもらうんじゃなくて、ぎゅってしたくなるよ」
「そういややってたな前…あたしもやってみようかな?」
「…アンタらな…」

どんどんずれてゆく論点とそもそもの紗玖夜ちゃんの着眼点に2人の天然具合を覗き見て、思わず苦笑する。ちらりと隣を見てみたら、音無さんも夏未さんも苦笑を溢していた。

「…もうええわあ、話にならへん…」

リカちゃんの方も今は諦めたのか、すごすごと引き下がって一之瀬くんになにやら愚痴を言い始めてしまった。…一之瀬くんの顔が凄く引き攣っているけれど、あれも愛情の一種なんだろうね、うん。

「…なんだったんだろうね、リカちゃん…」
「さあな…たまにリカの奴よくわかんないよなあ?」
「うん。よくわかんないよねー」
「…私にはお2人の方がよく分らないんですけど…」

…後の2人ののんびりした会話に音無さんがぼそっと突っ込んだのには、私も同意しちゃうけどね。まだまだみんなの道のりは遠いなあ。
見上げた空は、青くて綺麗だった。








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