約束しようよ、その未来を

宇宙人。そんなもの、オカルトの世界にしか無いものだってずっと思っていたのに。
…どうして、こんなことになってしまうのだろうか。

燃えるような夕日が目に染みる。今から去って行こうとする彼の後ろ背をちゃんと見たいのに、見られない。哀しみのような、苦しさのような。螺旋が巡るように、感情が交差しては同じところを行きつ戻りつを繰り返していた。

「…豪炎寺、くん」

絞り出した声は思いの外弱々しかった。まるで、自分の声ではないかのように儚く消えてしまいそうだ。

「…」

無言でこちらを振り返る彼の瞳は、何処と無く哀しげで、申し訳無さそうな顔をしていて。再び、言葉に詰まってしまう。…ひどく、もどかしい感覚。
話したいことや言いたいことはいっぱいある筈なのに、全然言葉にならない。

「…何処に、行くの?…置いて行くの…?」

何とか唇から出た言葉は、今のわたしの心細さに似たものを顕著に表しているようで、少しだけ後悔する。…今は、こんな弱いことを考えてる場合じゃないのに。それでも、募る不安。

「…すまない」
「…何で…」
「…本当に、すまない。もうお前とサッカーは出来ないんだ」

立ち止まったままこちらを見ている豪炎寺くんにゆっくりと近づく。一歩一歩、慎重に近付いていたら、一瞬、伸びた腕がわたしの身体を引き寄せた。ぐらり、と一瞬視界が揺らげば、次の瞬間に目に映ったのは、雷門のジャージの特徴的な目の覚めるような青と黄色。
次いでわたしよりも熱い体温が伝わってくる。背中に回る腕が微かに震えていて…自分が今、豪炎寺くんに抱き締められていることを漸く理解した。わたしの頭頂部辺りに、ずしり、と僅かな重みが乗る。

「…豪炎寺、く…」
「…すまない、お前があれだけシュートを受けていても、助けてさえやれなかった。…本当に、すまない…」

心なしか震える彼の言葉に思わずどきり、と胸が脈打つ。そんなことないよ、豪炎寺くんのせいじゃない。…そう言いたいのに。言葉が上手く口に出てくれない。
唇は空気を吐き出すだけで、言葉が霧散して消えてゆく。

「い、かない…で。一緒にサッカーしたい、よ…」

何とか絞り出した言葉は自分らしからぬ弱さだった。自分は今、どれだけ強さを失っているのか、皆目検討もつかない。
ぐっと背中をきつく抱き寄せられて、顔が固い豪炎寺くんの胸板に押し付けられる。早くに動く鼓動が、何だか妙に寂しかった。
…何となく、彼の出す答えが分かっていたから、なのだろう。

「…帰ってきて、くれるよね?約束、してくれるよね?」
「…」

呟く声に、腕は力を増すだけだ。言葉は、無いままで。
暫くして、そっと離れてゆく体温。次いで、頬に柔らかい感触を感じて、一瞬硬直する。

「…じゃあな、円堂」

それが唇だとわかった時には、もう彼はわたしに背を向けて歩き出していた。一度も振り返ることの無い背中に、わたしは叫ぶ。

「…約束!…ずっと…ずっと待ってるから!!」

段々と小さくなってゆく背中を見守る。
…信じてるよ、豪炎寺くん。必ず帰ってきてくれるって。だから、ずっとずっと、待ってるね。








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