ヒキガエルの誘拐劇

昔々、ある所に1人の女の子がいました。その子はチューリップから産まれた、人間のおやゆびほどしかない小さい、紗玖夜という名前の女の子でした。

ある日の事、紗玖夜が1人でぼーっと日光浴をしていると、突如として傍らに流れていた川から1人の…いえ一匹のヒキガエルが飛び出してきました。よく見ると白い髪の毛をつんつんと立たせたとてもヒキガエルとは思えないほどのイケメンなヒキガエルのようです。

「あ、豪炎寺くん」
「…ああ、円堂」

…ついでに、若干紗玖夜と知り合いのようです。…取りあえずそれは置いておいて。

「円堂、突然で悪いがうちに嫁に来てくれないか」
「え、やだ」
「…」

飛び出してきて挨拶もそこそこにヒキガエル豪炎寺はずぶ濡れで髪やら身体やらから水を滴らせたまま、紗玖夜にプロポーズをしてきました。しかし彼女はあっさりとそれを却下してしまいました。

「…何故だ」
「付き合っても無いお友達に突然結婚してくださいって言われて、はいそうですかって結婚する人なんて普通居ないと思うんだけど」

無表情に理由を問うヒキガエル豪炎寺に対して、紗玖夜は正論をつき返します。いつも大体人からの頼まれ事なら笑顔で了承する彼女でも、流石にこのお願いを聞くのは躊躇われたようです。しかし、ヒキガエルも食い下がります。

「頼む、この通りだ。…夕香もぜひと言っているし…」
「だから駄目だってば。台本には豪炎寺くんの求愛は無視しろって書いてあるんだもん」

…今さらっと彼女がとんでもない事を口走りましたが、気にしない方向で行きましょう。
笑顔で告げられた冷めた言葉に、ヒキガエル豪炎寺は一瞬黙り込み…そして意を決したように彼女の手首をがしっと掴みました。そして、目を見開いて驚く紗玖夜に一言。

「…悪く思わないでくれよ」
「…へ?」

彼女は自分の間の抜けた呟きと共に勢い良く身体が傾ぐのを感じました。…よくよく見たら、何と自分がヒキガエル豪炎寺に横抱き…所謂お姫様抱っこと言われる体制のまま抱えられ、川の中に浮かんでいるのに気付きます。しかし、もうその時には既に遅く。

「ちょっと、豪炎寺くん!?」
「安心しろ、ちょっと潜るだけだから」
「そういう問題じゃなくてー!!」

ちょ、怖い降ろしてー!、という彼女の声は長く遠く響いて、水に飲まれてしまったとか。…これから、一体どうなるのでしょうか?


キガエルの拐劇

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