花の国での結論
花の国、と言われるだけあり、紗玖夜がたどり着いた先の国はあたり一面が花で埋め尽くされていました。見るものの心を慰める、優しい景色に包まれた、平和そうな国。それこそが花の国なのだと風丸はそう言います。
風丸に誘われた紗玖夜は地上に降り立った後、彼に手を引かれるがまま、国の奥へと聳えていた城へと連れて行かれました。その奥で待っていたのが。
「…鬼道、言われた通り連れて来たぞ」
「ああ…すまなかった、風丸。ありがとう。…お前が円堂紗玖夜だな。俺は鬼道有人と言う」
「…初めまして」
茶色いドレッドを頭の後ろで束ね、青いマントに身を包んだ荘厳とした雰囲気を漂わす人。その人こそが花の国の王子、鬼道有人でした。王座を背にした彼には、なるほど王の威厳と言うものが滲み出ているような気もします。
「…どうしてここに来てもらったか、判っているか?」
「ええまあ…大体は」
ここへ来る途中で、何度も何度も聞かされたのですから、忘れるはずがありません。曖昧な頷きと共にそう呟き返すと、鬼道は目を細めて頷き―先を促すかのように彼女に問いかけました。
「それで…お前の答えは?」
単刀直入に迫られた答え。息の静まり返る空間に、彼女は一瞬、瞑目しました。…そして、息継ぎをすると、一言だけで完結に言い切りました。
「…今はまだ、結婚なんて出来ません」
…否、と。予想外の答えだったのでしょうか、その場にいた鬼道と風丸がえ、とでも言いたげに目を見開きました。彼らは諾の一言を予想していたのでしょうが、彼女はそれをきっぱりと断ったのです。
「まだどんな人なのかわからないし、会ったばかりの人に突然結婚してくれ、なんて言われたら誰だって否って言いますよ」
にこやかに微笑みながらばっさり。…強気にそう言ってのけた紗玖夜は言い終わった後、鬼道に向けてすっと手を差し出しました。それに対し戸惑いの瞳を向けられた彼女は、なおも笑いながら。
「…だから…あなたがどんな人なのか知るために…まずはお友達から始める…っていうのは駄目なのかな?」
「円堂…」
あまりの爆弾発言っぷりに周りは固まってしまい…そして次いで笑いが起こってきました。そして、鬼道は差し出された彼女の手を握り返しました。
「友達から…な。分かった、…これからよく俺を知ってもらうために努力しよう…よろしく」
「うん、よろしくね、…あとそれと、一郎太も!」
「お、俺!?」
「勿論そうだよ。…暫くここにいて、2人とものお友達から始めるから。よろしく!」
固く結ばれた互いの両手は近い未来の象徴をしめしている…のかもしれませんね。
ひとまず、このお話はハッピーエンドと言うことで…。
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