いやだなあ、と心の中で思ってはみるけれど、所詮は思うだけに留めてしまう。だって、やっぱり嫌われたくないから。
こんなつまらないことに嫉妬するなんてみっともないなんて思われたくなかったから。
目の前であたふたしながらロッカーからバラバラと落ちていったチョコレートやクッキーの袋や箱を拾い集めている風丸を眺める。焦っているのか、必死でかき集めるはしからぼろぼろと腕から溢れ落ちていくのがそのうち見ていられなくなって、私も彼の傍らに座り込んで拾うのを手伝い始めた。
彼は慌てたようにすまない、と言うと更にかき集める速度を早めるのを見て、また胸がちくちくするのを感じる。

「…やっぱり、いやだなあ」
「…な、何が?」

他の女の子たちが風丸に渡したであろう可愛らしいラッピングの包みを本人にぎゅっと押し付けながらそう呟く。私が渡したものも、その中に紛れてしまっているし…。
そんな事をいちいち気にしなきゃいけない、器の小さい奴って言われても仕方ないのだけど…でも、それでもやっぱり、我慢できなかった。

「…風丸が、そうやって可愛い女の子からいっぱいチョコとか貰ってるのが、…その、やだなあって…」

言いながら段々と小さくなっていく自分の声。その後に続く沈黙に耐え切れなくて、わたしはそのまま風丸から顔をそらして俯いた。…言わなきゃよかったかな、こんな事。
こんな女々しい事、考えるなんて鬱陶しい奴だって思われても仕方ないことなのに。
暫くの間続く沈黙。それに耐えられなくて、小さな声でごめんなさい、と呟きながら顔を上げる。
と、同時にばらばらばら、という妙な音がして、次いでぎゅう、と体に強い圧迫感。なぜだろう、と思って目を瞬くと、ちらりと青い髪が見えた。…風丸に、抱きしめられて、る?
手に持ってたお菓子の袋は!?と思いつつ足元を見てみると、全て床の上にばらばらに転がっていた。…折角拾ったのに、また拾いなおしか…。心の隅っこでそんな事を考えながら風丸の背に手を回せば、さらに強く抱きしめられる。

「…じゃあ、俺、これ全部部活の皆にあげるから」
「え…」
「…ありがとう」

ぽんぽんと次々出てくる言葉に少し驚いて、腕の中に抱き込まれたまま目をしばたたかせていると、突然風丸の口から謝罪の言葉が出てきた。それに更に驚いて思わずひゅっと息を呑む。

「お前が嫉妬してくれて、嬉しかったよ」


Happy Valentine!


その策士然とした口調に、思わず頬に熱が上るのを感じた。



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