何だか、私は風丸くんの前では泣いてばかりな気がする。ぼろぼろと流れていく涙を必死で拭いながらふと考えた。

「…ほら、これ。あんまり擦ると真っ赤になるぞ」
「…ぅ、ありが、と…」
「無理に話さなくて良い。…取り敢えず落ち着いてから、な?」

彼は、優しい。それもきっと守並みに。聞き心地の良いアルトの声と共に差し出されたハンカチをありがたく受けとる。薄く青みがかったハンカチは、何だか風丸くんの髪の色と重なって、何故だかとても暖かかった。
また風丸くんに連れてこられた人気の無い夕暮れの公園は暫くの間、私がぐすぐすと鼻を啜る音だけが響いていたけれど、やがて私の涙が収まると同時に段々静けさを取り戻す。唇から漏れ出すのが嗚咽でなく小さなしゃくりになりだした頃、それまで黙って私の頭や背中を撫でるだけだった風丸くんが口を開いた。

「何で泣いてたか…分かるから聞かないけど、…その、大丈夫、か?」

こちらを窺うような、柔らかい声。その声を聞いたせいだろうか、あんなに悲しい気持ちになっていた筈なのに、いつの間にかその荒立つ気持ちが和らいでいた。涙もしゃくりも、すうっと波が引くように引いていく。

「…うん…大丈夫、もう、大丈夫だから」
「そっか」

安心したようにほっと息を吐いて風丸くんは柔らかく笑う。守のようにきらきらとした輝きは無いけれど、こっちを優しく包み込んでくれるような暖かさや安心感が渦巻いて胸にすとんと落ちてくるような感覚を覚えた。…何でだろうか、先程まで鉛のように固くて重かった心が、少しだけふわりと軽くなった気がする。

「…風丸、くん」
「ん?」
「あの…ありがとう」

虚につかれたような顔でこちらを見てくる風丸くんに恐る恐る顔を向けてお礼を言う。…本当はあんまり顔を見合わせたくは無いけれど。だって、今はきっと私、酷い顔してるだろうから。多分、異性にはあんまり見られたく無い顔をしているだろう。

「…何か、最近毎回毎回泣いてたら風丸君が来てくれてる気がして…すごくね、心強くて…嬉しかった。…だから、ありがとう」
「…ああ、どういたしまして」

少しだけ、躊躇いを残した苦笑を漏らした風丸くんは暫くの間黙って私の背中を撫で続けていたけれど、不意に呟いた。

「…なあ、1つだけ、斉茗に頼みたいことがあるんだ」
「何?私に出来ることなら、何でもするよ」
「…斉茗にしか、出来ないことなんだ、」

「…前からずっと好きだった。…俺と、付き合ってくれないか」

公園に落ちた影に、一層風丸くんの決意に満ちた表情が濃く映った。


滲み出る優しさ


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