そう、いつまでも私は守に甘えてばかり。いい加減、私は守から離れなくちゃいけない。…そう考えてはいても、頭では分かっていても、決して離れる事ができなかった。だから、これはいい機会。守離れをする、いい機会なんだ。そう自分自身に言い聞かせる他、私は自分を守る術を持っていなかった。

―秋と、付き合う事になったんだ。
―円堂くんと、付き合う事になったの。これも、栞ちゃんが応援してくれたお陰だよ!

にこにこと二人ともが嬉しそうに私に報告してきてくれたのを聞きながら、その実私の頭の中には何一つとして聞き取ってなどいなかった。耳が、脳神経が、外からの情報を遮断して、全てを受け入れる事を拒否していたからだ。頭が、胸の奥が痛かった。
嬉しそうに昨日告白した事やされた事を2人がそれぞれ話してくるのを耳半分に聞きながら、私はひたすら上手く笑えているかどうかばかりを考えていた。


夕焼けが目にしみて、視界がぼやける。そういえば、誰かが恋の終わりに流す涙は綺麗なものだって本に書いてたっけ。誰だっただろうか。
ともかく、今自分が歩きながら泣いている事だけは理解できている。幼馴染なんて、曖昧で儚い絆で、いつ崩れてしまうか分からないものなのだから、ある日突然切れてしまってもおかしくなかった筈なのに。いつか切れてしまうと分かっていたのに。

ぐす、と鼻を啜ってから、流れていく涙を必死で何度も指で拭き取る。こんなに泣いたのは何時ぶりだろうか。泣く事自体はしょっちゅうある事だけれど、ここまでたくさん涙を流すのは久しぶりな気がする。…きっと明日は、酷い顔してるんだろうな、わたし。今だって、十分酷い顔、してると思うけれど。
―そして、泣いて酷い顔をしている時に、必ず彼は私の所に来てくれるのだ。

「斉茗」
「…風、まる、く…」

青い髪をふわりと靡かせて、そっと私の頭を撫でてくれる彼は、やっぱり優しそうな笑顔で私を慰めてくれる人だった。例えようも無く私を慰めて、暖かい気持ちにさせてくれる、そんな人だった。


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