彼女が、円堂を見なくなった。前までは俺と一緒に居ても、視界の端に円堂が入ったら心ここにあらずの状態で哀しそうな雰囲気を纏って円堂を見つめていたのに。今では一切、アイツに目を向けることが無くなってしまった。…いや、意識的にもう目に入れないように気をつけているというべきか。他の人間にさえも下手すれば分ってしまうのではないかというほどに円堂を避けていた。
それと同時に、彼女は無理に笑うようになった。以前までは、少しずつではあるけれども自然な笑顔を見せてくれるようになっていたのに、今ではそれらが全て見当たらない。貼り付けたような微笑を浮かべるだけで、もう本当の笑顔を見せてはくれなくなってしまった。
「…斉茗、」
「…なに？風丸くん」
いつもと変わらないように声をかけても、帰ってくるのはどこか固い、無理に笑う彼女の顔。その顔に、思わず腹に溜まっていたものが逆流するのを感じた。まずい、と思った頃には、もう既に遅し。
「…円堂と何かあったのか」
「」