翌朝、2月14日の午前9時。
普段なら皆して特訓に勤しんでいる時間帯なのだが、流石に今日は男女共々脳内がピンクに染まる日。朝から何だか落ち着きが無さすぎるイナズマジャパンのメンバーを見かねて、あの鬼監督、久遠道也もこの日ばかりは練習を休みにすると宣言する他無かった。
このまま練習しても絶対身にならないどころか、逆に男子同士(主に一部の)が練習と称した激戦を繰り広げ、下手を打てば負傷者が続出するに違いないと踏んだのだろう。流石日本代表を世界まで導いた名監督なだけはある。…とても懸命な判断だ。

「じゃあ秋ちゃん、ちょっと行ってくるね!」
「うん、それは良いんだけど…大丈夫?それ、重くない?」

宿舎の出口で大きな包みを抱えた噂の的となっている少女、円堂はそんな事情があったとは露知らず、単純に練習が休みになったことを喜んでいた。練習はしたいけれど、せっかくのバレンタイン。どうせならこの日に全て手製の菓子を配り終わりたいと思っていたため、その1日だけの休みをくれた監督に感謝さえしていた。…監督は特訓を止めざるを得なくなった理由をいよいよ伝えにくくなりそうだ。

「うん、平気平気!重そうに見えるけど、中身は大して重くないから、大丈夫だよ。じゃあ、行ってくるね、夕方までには帰るから!」
「はいはい、何かあったら電話してね」
「はーい」

まるで母子のような会話をして、円堂は楽しげな足取りで宿舎を後にする。軽い足取りで向かう方向は、恐らく外国のエリアだろう。

…そして、その彼女の後ろをぞろぞろと着いていくメンバー、6名。
怖いくらいの笑顔で静かに彼女を尾行する日本のメンバーはそれはそれは異様な光景だったとか。

そんな彼らは一番の目的…円堂紗玖夜の本命を見つけて、彼女に知られぬうちに抹殺する…と言うことを果たす為に行動を開始した。

果たしてこのバレンタイン、どんな日になるのだろうか…

バレンタイン・2

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