※Sun Like番外編


イナズマジャパンの宿舎にある調理室では、2月のイベント、バレンタインの為のお菓子作りが行われていた。普段は選手として世話される側に立っている円堂も、今日だけは特別に調理室への入室を許可されて、マネージャーと一緒にお菓子作りに勤しんでいた。…その際、うっかり答えてしまった一言が、後に大騒動になるとも知らずに。

「紗玖夜さん!本命のお菓子ってあるんですか!」
「本命?…うん、ちゃんと本命の為に作ってるよ〜」

この一言がマネージャーの音無春奈に伝えられてしまったことが、今回の騒動の原因になるのだろう。

***

「何、それは本当なのか、春奈!」
「うん、お兄ちゃん!間違いないよ!」

イナズマジャパンのくつろぎの場所であるはずの食堂が、一触即発な空気に包まれる。春奈の報告を聞きつけた数人が既に顔に笑みを貼り付けて互いを牽制し始めた。
想い人である少女、円堂紗玖夜が誰に本命のチョコ…ないしはお菓子を渡すか。それが彼らにとっての一番の注目株になってしまったのだ。

「ねえ、音無さん、どんな袋に入っているとか、何のお菓子が本命とか、そういうことは分からないの?」

一見穏やかな笑みを発している吹雪がそう春奈に問いかける。しかし彼女は首を振って分からない、と答えた。

「ごめんなさい…紗玖夜さんが作ってたお菓子の量…ハンパなく多くて…包装するところまでちゃんと見てないんです。あれ、軽く百人分くらいあるかと…」

改めて思い出した、彼女が作っていたお菓子の量。買い物をしてきた時もそうだったが、何であんなに作る必要があるのか疑問に思うくらいの量だった。
その事を簡潔に顔をそろえる面子に伝えれば、彼らが行動に移る瞬間はあっという間だった。

「…よし、明日はバレンタインデー…円堂が誰に本命を渡しに行くのか…尾行するぞ」

力強く宣言した鬼道に、これまた力強く頷き返す何人かのメンバー。

「…そんなことより練習した方がよくね…?」

呟いた染岡やそれに同意して頷いた何人かの言葉は、宙に浮いてかき消されてしまったとか。


バレンタイン・1

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