※連載番外


季節はもう12月。12月といえばクリスマス。
…なんて、何とも短絡的というか、些か商売の波に流されている感じはしないでもない。…でも、やっぱり。

「綺麗…!」

お店や商店街、はたまた普通の一般家庭でもイルミネーションがきらきらと輝いていて、練習帰りのもの寂しい帰り道を明るく照らしていた。
何となく薄暗い道よりも、やっぱりこうやって色とりどりの光が輝いている方が気持ちも明るくなるというものだ。

「円堂はやっぱりこういうのが好きなのか?」
「うん、こういう綺麗なもの、大好き!」
「女子はそういうものなんじゃないのか?夕香もツリー出して飾ってたしな。」
「え、もうツリー出したの?早いね、うちはまだ出さないってお母さんが言ってた。」

部活の帰りに商店街に寄る、と言ったら女子1人は危ないから、と豪炎寺くんと鬼道くんがついて来てくれた。一郎太は今日は用事があるらしく、先に帰ってしまった。…残念、一緒に見に行きたかったな、また今度誘おう。

それにしても、と煌めく光に目を戻す。一本一本はただのコードで、一つの小さな光なのに、集まって形を成すとここまでキラキラと綺麗に輝いてみえるのはやはり不思議だ。
きっと空気が冷えて澄み渡り、光が余計に綺麗に見えるこの季節だから、と言うのも手伝っているんだろう。

じっと見つめているのがそれほど物欲しげにしていたのだろうか、ふと鬼道くんがわたしに声をかけた。

「…うちにかなり大きいツリーがあるんだが…もし良かったら飾り付けしにくるか?」
「え!?いいの?」
「ああ、構わない。…と言うより、俺はそういうのは苦手でな。」

鬼道くんが苦笑して豪炎寺くんに目線をやれば、豪炎寺くんもまた目を細めて頷く。

「夕香にねだられて一緒に飾り付けしてはみたんだが…どうも苦手らしくてな、怒られた。」
「その点、佐久間や成神は器用に飾りつけとかしていたな。…あのセンスは正直羨ましいよ。」
「一朗太もそういうの得意みたいだよ。めんどくさいってあんまりやらないみたいだけど。」
「ああ…あいつはそういうの得意そうだな。」

ゆっくりとした歩調でまわりの景色を楽しみながらそんな話をしあう。やがて商店街のゲートが見えてくるのと同じくして光が減ってゆくのを名残惜しく思いながら家へと足を進めた。

「うわ、真っ暗…。」

ゲートを出ればとたんに明かりは街灯だけとなり、辺りは一気に寂しげな風景に変わる。
その変わりように思わず首を縮めると背後で2人が楽しげに笑った。そしてそのまま、両脇に温もりが寄る。

「また今度、皆でここに来たいな。」
「そうだな。」
「また今度、な。」

未だに笑っている両隣の2人の片手をゆっくりと握ってみる。じんわりと広がる熱に安心を覚えてほっと息を吐くと、また彼らも笑って。
そうして、もう影さえ出来ないほど暗い道を辿り、ゆっくりと家路につくのだ。


鬼道、豪炎寺

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