たった今まで、イナズマジャパンの選手選抜が行われていたとは思えぬ沈黙を守る、選ばれた選手達の目の前には、彼らがよく知る監督、響木正剛の他、2人の男女が並んでいた。

男の方の名は久遠道也。新たなるイナズマジャパンの監督である。
厳格な性格なのであろう、眉間に軽く皺が寄っているように見えなくもない顔で、静かに挨拶を済ませた。
年の頃は30才前半といったところか、男前と世間一般的には言われるであろう顔に、無表情を張り付けている。

そして、女の方はと言えば。

「晃斎楓莉です。コーチに選任されました、よろしく。」

―これまた何とも静かな挨拶である。
淡々と必要事項のみ述べた彼女は後は何も言うことなどないと言わんばかりにその白い瞼を閉じ、自分の世界に入ってしまった。
年の頃はどう見ても20代前半。
つり目気味の黒い瞳と通った鼻筋、そして薄い唇にはやはり監督と同じく無表情が宿っていた。

唖然と此方を仰ぎ見る選手の視線など何処吹く風の如く受け流し、彼女は右の肩口辺りで1つに結われた黒髪を邪魔そうに払いのけている。

きっちりとスーツを身に纏い、無表情を貫く監督に、何処か気だるそうな雰囲気を纏う、やはり無表情なコーチ。
イナズマジャパンのメンバーは早くもこの異色の監督陣に不安を抱いた瞬間だった。





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