FFIの予選会場の廊下で、何だか懐かしくて厄介な人たちに捕まってしまった。

「よお、久しぶりだな円堂」
「元気そうで何よりだ」
「えーと…南雲くんと涼野くんね、久しぶり…」

元エイリア学園マスターランクチーム、プロミネンスとダイアモンドダストの両キャプテンだった2人に出会ってしまった。…しかし何故此処に。誰かの応援に来たとか?…いやいや、この2人に限ってそれは無いか。

「えっと…何でここに?」

若干引き攣った顔になるのを承知の上でそう聞く。嫌な予感がするのが、わたしの気のせいならば良いのだが。

「あ?ああ…いや、お前を俺らのチームにスカウトしに来た」
「是非、私達と一緒に来てほしい」
「…はい?」

わたしの耳はもう遠くなってしまったのだろうか、一瞬自分の耳を疑う。FFIはもう既に始まっているのだ。しかも、日本は第一試合、第二試合共に勝ち抜いている。次は決勝であるというのに、この時期になってスカウトなんて、どういうことだろうか。

「いや、あの…わたし日本代表なんだけど…」
「それは承知している。だけど私達は君に韓国代表に来てほしいんだ」
「アフロディも喜ぶだろうしな、お前アイツのお気に入りになってるから。…ぶっちゃけジョンスがゴール守ってるよりもお前が守ってたほうが士気も上がるしよ」
「ええと…」

段々と壁際に追い詰められていくような感じでじりじりと後退せざるを得ない状態に追い込まれている。ていうかその言い草はジョンスさんに失礼だからね、南雲くん。
どうしよう、どうやって逃げようか、と思っていたら、丁度いいところに見慣れた赤い髪の毛が見えた、気がする。そしてその赤い髪の毛はわたしが何かを言う前に、猛スピードでこちらに近づいてきて、わたしの退路を塞いでいた2人の肩に両手を置いた。

「…やあ風介、晴矢。こんなところで何しているのかな?紗玖夜ちゃんを囲むようなことして」
「…ヒロトくん…」

やっぱり、赤い髪はヒロトくんのものだった。ちょっとだけ退路が確保されたような感じがして、ほっとする。よかった、これで逃げれるかもしれない。
…とか思ってたら、頭上でなにやら言い争う声が。

「んだよ、邪魔すんなヒロト」
「私達のチームのために必要な事なんだ」
「皆のためとか言って、結局君達が紗玖夜ちゃんを傍に置いておきたいだけだろ?」
「何だよ、だったら譲ってくれんのか?」
「駄目に決まってるだろ?紗玖夜ちゃんは俺たちのキャプテンだ。大体、彼女がいなくなったら日本のチームが崩壊するじゃないか」
「早く崩壊すればいいだろう?」

ぎゃあぎゃあと瞬く間にうるさくなる廊下。道行く人の目線が痛くて思わず顔を伏せた。…ああもう、早く皆のところに帰りたい。

結局、わたしは帰りが遅いと心配して来てくれた監督と秋ちゃんによって救出され、もう二度と1人で出歩かないようにきついお咎めを受けたのだった。


chain chain!

黒猫さんに捧げます。

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