ゆっくりと自分の手に自分とは全然違う固くて大きくて日に焼けている手が重なって、ぎゅっと優しく握られる。手のひらの温度はとても暖かくて、伝わる温もりが心地よかった。

「源田くん体温高いね」
「そう言う円堂は体温低いな。指先が冷えてる」
「よく言われる、それ。皆わたしが冷たいって言うの」

酷いよね、と茶化すように笑えば源田くんも整っている眉尻を下げて苦笑していた。
自分からも源田くんの手を控えめに握ってみれば、彼は照れたように笑って両手にほんの少し力をいれる。人肌の温もりがまた近くなった。

季節は秋から冬に変わろうとしていて、毎朝毎晩冷え込みが激しくなっていた。…これが案外、低体温で冷え性なわたしには辛いことで。
指先や足の指の感覚が鈍くなったりするし、ボールを取るときなんかは大変だ。…あ、でも豪炎寺くんのファイアトルネードはこの季節は有難い、暖かいから。

そんな事をつらつら考えながら包まれていない方の手を使って源田くんの手を逆に包むように握る。ごつごつとした手はわたしの手と違ってささくれや小さな傷が沢山あった。
ふと、自分の手を見落とす。わたしの手は殆ど傷なんて無くて、指も細くて、彼のものと比べるととても頼りなく見えた。

「…キングオブゴールキーパー、かぁ…。」
「ん?どうした?」

わたしの呟きに彼はやっぱり優しい声で問い返す。
この優しさは、一郎太がくれる安心感と酷似していて、好きだ。
傍にいてくれるだけで、ほっとするから。

「…わたしもいつか、源田くんみたいなゴールキーパーになれるかな?」

わたしの手で包み込んだ彼の手を自分の頬に当てる。ざらざらした感触が頬に伝わってきた。

「…なれるさ、円堂なら」

躊躇いがちにではあるが、ゆっくりと頭を撫でられた。片方だけでわたしの頭を覆ってしまえるほどの手で、柔らかく、労るように。
その感覚に溺れるように目を閉じれば、暫くして額に何か固いものと、ふわふわした柔らかなものが当たって思わず閉じていた目を開けた。

開いた視界のほとんどが源田くんの顔が占めていてほんの一瞬、驚いてしまったけれど、瞬き1つでそれを何とか抑える。

「円堂には円堂の良いところがある。俺が真似することのできない、沢山の長所があるだろう?」
「…」
「大丈夫だ、円堂なら。きっと、俺よりも凄いゴールキーパーになれる。…頑張れ」
「…うん、…頑張るね」

ふわふわした不安定な不安や劣等感。男では無いわたしの、コンプレックス。そういったものを、彼は一瞬にして拭い去ってくれた。
尚も綺麗な形をした眉尻を下げて優しげに笑う源田くんに、小さな声でありがとう、とお礼を言えば彼は嬉しそうな顔をして笑う。

「俺も円堂に負けないように頑張らないとなあ…」
「来年のFF、お互いに頑張ろうね」
「そうだな。…今年こそは俺達が勝つぞ」
「雷門だって頑張って勝つよ!」

そうして他愛も無い話を続けて、笑いあって。
そしてまた、何処かの試合会場で向かい合うのだろう。互いを高める、ライバルとして。


hear twarming time


まりさんへ捧げます。

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