※Sun Like番外編

…マズイ。非常にマズイ。

「…これはこれは飛鷹さん。この間はお世話になりましたねぇ。」
「…お友達?友達、たくさんいるのね、飛鷹くん。」
「いえ…これはその…。」

何がマズイって、今この状況と、一緒にいる人が悪い。…いやまあキャプテンが悪いなんて死んでも言えないが。…言ったら確実に俺は殺されるだろうな、イナズマジャパンのメンバーに。

何故こんな事になったのか…それは本当に偶然の事だった。
俺は気晴らしに合宿所から出て散歩をしていたら、恐らく忙しいマネージャーの代わりに買い物をしていたであろう、キャプテンに出くわしたのだ。
全く、誰か一人…そう、あの水色の髪の心配性な幼馴染でも連れてくればいいものの、この日に限ってキャプテンは一人でいた。
…そして、見覚えのある顔2人に絡まれていたのだ。

「…で、今は女連れの身ですか。良いご身分なことで。」
「女連れ…?今偶々出会っただけ、でしょう…?
「…この人は関係ない。組の掟を忘れたか?」

不思議そうに男達の言うことを真顔で返すキャプテンに若干脱力しかけた。…このキャプテンは鋭いくせに、妙なところで天然な上に抜けているし、変なところで世間知らずだ。…あの心配性な幼馴染のせいだと見た、くそ。

現に今だって絡まれていることに全然気付いてないらしい。しかもこの二人を友達だと言い出した。…まあ、俺の過去を知らないなら友達だとも言うかもしれないが…いやでも雰囲気的にどう見ても友達じゃないだろう。

「ともかく、この人には手を出すな。失せろ。」
「…っ!…分かりましたよ。今回は引いてあげますよ、飛鷹さん。」

後ろにキャプテンを隠すようにして相手を睨み上げれば、2人は少しだけ怯えたように捨て台詞を放って逃げていった。全く、相変わらずで助かった。
後ろを振り返って下を向けば、状況を把握していないのかきょとんとした顔つきをしたキャプテンがこちらを見上げたり、逃げていった2人を眺めたりしていた。

「大丈夫でしたか、キャプテン。」
「え?何が?」
「いえ、だから…。…もういいです、何もされてなさそうだし。」

説明するのにも疲れて、思わず溜め息が出る。…この無防備さ、やっぱりあの幼馴染が原因だな。いつか文句言ってやる。

「ねえ、飛鷹くん?どうしてさっきの2人に失せろなんて言ったの?友達じゃないの?」
「友達…と言えば友達ッスけどね…まあ、いつか話しますよ。」
「?…うん…。」

未だに何も分かってなさそうな顔をしたキャプテンに思わず溜め息をもう一つ吐いて、その手に持っていた大きな袋を取り上げた。結構重いな、これ。
俺の突然の行動にビックリしたのか、あたふたと慌て始めたキャプテンを尻目に歩き出す。

「ちょっと、飛鷹くん!その袋…!」
「どうせ合宿所まで持って帰るつもりですよね?…だったら持ちます。女にばかり荷物を持たせるほど、俺は落ちぶれてませんから。」
「えぇ…?」

漸く我に返ったのか、俺の名前を呼びながら追いかけてくるキャプテンにもう一度目線を向けて歩き出す。…次からは、なるべくこの人の行動を把握しておこう。そう心に決めてから。

苦労人の影仕事

月子様に捧げます。

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